それぞれのクリスマス
~イシュアの場合~
「えーと リジェクトさんには普通のケーキで
イクス兄さんには甘さ控えめで苦みのあるコーヒーで作ったモカケーキで
シオンさんには甘さたっぷりホイップのいちごケーキと…
よしっ 出来たっ」
イシュアは台所で今から帰ってくる大好きな相手の為のケーキを作っていた
それぞれの好みが全て違う為、少々大変ではあるが、大好きな相手の為に作っているのであるから、けして苦では無い。
「えーと…折角だからサンタの服でも着てお出迎えしようかなぁ…
確かここに双月さんからのプレゼントで貰ったやつが…」
三人が食べるケーキをテーブルに置いて、お茶の準備をしてから、少し考えて、少し早いクリスマスプレゼントで貰った袋を開けてみると…
「あ これ…可愛いかも…付けてみようかな…」
手作りであろう、なぜかショートパンツなサンタ衣装と一緒に、黒猫のヘアバンドと尻尾も入っていて、それを手に取って、少々考えて…
「あ!お帰りさないですっ
兄さんっシオンさんっ!リジェクトさんっ
見て見て下さいっ
黒猫の耳と尻尾ですw可愛いですよねっ」
そう言って、可愛らしいサンタの衣装に猫耳と尻尾を付けたイシュアが三人を玄関で出迎えるのであった…
~ルティの場合~
「ふぅ…やっと出来上がった…」
ディルがいない部屋で、ルティはこそこそと時間を掛けて編んだマフラーを見て満足そうに微笑む。
上質のウールの毛糸でディルの為にこっそりと大分前から編んでいたのがようやく完成したのだ。
白くてふわふわのマフラーを綺麗にラッピングしてリボンで結び、自分も身支度を始める。
今日は珍しく外で待ち合わせして、デートをしようという事になったのだ。
いつもカッコいいディルの隣に並んでも見苦しくない様に綺麗に髪を整えて、大切なうさぎ耳を付けて、アコライトの制服の上に、真っ白なふわもこなケープを被る。
これは双月が作ってくれた物で、ディルとのデートに着けていけばいいとプレゼントして貰った。
「少しは…可愛いかな…?」
鏡で見る自分の姿をちょっと不安気に見ながら、まだまだ子供で幼い自分の姿に少々がっかりしつつも、乱れないかチェックをして、紙袋にディルの為に焼いたアイシングクッキーと出来上がったばかりのマフラーを入れて、台所でケーキを作っていたイシュアに声を掛けて外に出る。
「プレゼント喜んでくれたらいいけど…どうかなぁ…
やっぱり買った方が良かったかな…」
待ち合わせ場所に向かいながら、クリスマスに華やぐプロンテラの街並みを眺めつつ、再び不安が襲ってきて、小さく呟く。
「ぁっ…!」
目を上げた先には待ち合わせのカフェ。
そのガラスの向こうにディルを見て、胸が高まる。
そして…声さえ聞こえない位置なのに、ディルはガラス越しにこちらに視線を向けて、微笑んで手を振ってくれて…
(ああっ…ディルさんっ
大好きっっ)
ルティは顔を赤らめつつ笑みを浮かべて、胸の中で叫びながらディルの待つカフェへと走り出すのであった。
~ウォレス&イルシアの場合~
「よしっ!これで皆の分のプレゼント全部終わったなっ」
「そうだな
ウォレスがいてくれて良かったよ
俺だと中々いいのを選べないからさ」
プロンテラの街並みでは、クリスマス向けの露店も多く、更に店もいつもに増して品揃えが揃っており、その中をウォレスとイルシアは宵闇のメンバーへのクリスマスプレゼントを選んでいた。
ウォレスが迷いなく色々取り決めてくれるせいで、いつも優柔不断なイルシアは安心した様にウォレスに礼を言う。
「いや ボクも兄ちゃんがいたからこんなに早く決められたんだよっ
ありがとなっ」
「じゃあ折角だし、ウォレスが好きそうなスイーツとかもあるカフェが近くにあるんだ
そこでお昼とお茶をしないか?」
「おーっ そうしようぜっ」
プレゼントを全てカートに直したイルシアからの提案に、ウォレスも嬉しそうに頷き共にカフェに向かう。
クリスマスらしい飾り付けの店内で、七面鳥のシチューで身体を暖め、クリスマスヴァージョンというショートケーキをデザートとして、ウォレスは目をキラキラさせて食べていた。
「はぁ…こうやって二人でクリスマスにご飯して…
デートみたいだなっ」
「っ…い…いや…みたいっていうか…俺は…その…ウォレスと…デートなつもりだった…んだ」
「そっか…へへっ 嬉しいなっ」
嬉しそうにケーキを食べていたウォレスの何気ない一言にイルシアは顔を真っ赤にしつつ、正直な気持ちを口にして、それを聞いたウォレスも思わず頬を赤らめながら笑顔になり。
「それで…これは…ウォレスにクリスマスプレゼントなんだ…貰ってくれ」
「マジかっ
サンキュっ!イルシアにーちゃんっ
そいでさ…さっきカートに入れて貰ったでっかい包みあるじゃん?そう…それ
それさ…ボクからにーちゃんへのプレゼントだったんだ…」
「オ…俺にっ!?」
「そうっ
よしっ!一緒に開けようぜっ」
そうして解かれた包装紙の中からは、ウォレスには若草色の小さなセーターが…
そしてイルシアにはワインレッドの大きなセーターが出てきて
「被ったな…でも…すっげー嬉しいっ!ありがとうなっ」
「本当に被ったな…俺も凄く嬉しい…ありがとう…ウォレス」
お互いに顔を赤らめながらも本当に嬉しそうに二人は笑いあう
そんな可愛らしいクリスマスの一コマ…
~紫苑の場合~
「どうしてアタシが料理作ってるのかしら……」
キッチンもある宿の中で、サラダを作ったり、パスタを茹でて味を整え盛りつけたり、そのパスタに掛けるチキンのトマトソース煮を作ってる自分に思わず恨みがましく呟く。
「まぁ…トーゴの料理でも良かったんだけど…
今は異常が出なくても、見た目綺麗だけど…ちょっとまだまだ味が変な所あるし…
ほら…昨日まで任務でこっち居なかったから、料地任せても無理しちゃうだろうし…
そうなったから単にアタシが作ってるだけなのよっ」
そう、いつもにも増して力が入った料理を作りながら、まるで誰かに言い訳する様に怒りながらも、どこか幸せそうに料理をしているのであった。
「ケーキはトーゴが買ってきてくれるとして…
そういえば…プレゼントなんて買って無かったわね…
まぁ、これだけの料理でも十分なんだろうけど…そうね…」
シャンパンも用意して、全てを綺麗にセッティングしてから、ふと考え、ソファーの上に無造作に置かれた紙袋には双月から貰ったプレゼントを手に取る。
「そうね…たまにはこんなのでお出迎えでもいいかもね」
そう妖艶に笑ってからディルから貰っていた性転換の薬を飲んでそそくさと服を着替える。
「うふふwいらっしゃい
今日はアタシがプレゼントでもいいのよw」
そうナイスバディな妖艶美女と化した紫苑が、エロいとしかいいようがないサンタ衣装を着て、トーゴを出迎えるのであった…
その後のトーゴがどうなったかは…本人達の知る所である…
~双月の場合~
「はい ライ?
クリスマスケーキと紅茶だよ~」
自分の机で書類に目を通していたライは、可愛らしいケーキと温かな湯気を放つ紅茶が置かれた事でやっと顔を上げる。
「そうか…クリスマスか…
最近仕事が忙し過ぎてなんか忘れてた…」
「今日はさすがに休みが多いしね…
あんまり根を詰めるとバテちゃうからさ…息抜きに食べようよ?
折角作ってきたんだよ」
「双月が作ってきたんだ?それは頂かないとね」
少し疲れた顔で背伸びをしたライは、双月の言葉で今日がクリスマスだという事を認識し、少しだけ心配した様に見つめる双月に、やっと腰を上げて、中央にあるテーブルへと足を向けて。
「今夜も徹夜になりそう?」
「いや…そこまではないかな?今日位は夜は帰れると思うんだど…」
「そうか…じゃあ僕は自分の仕事が終わったら家に帰って、クリスマスの支度でもしとこうかな?
ライに美味しいご飯食べさせてあげたいし…」
ライの隣に腰を下ろして、帰れると聞いてしまえば、不安そうな顔が嬉しそうに笑ってしまい。
「まぁ…僕がこんなに最近仕事頑張っていたのは…そのせいもあるんだけどね…」
「え…?んんっっ…!」
「勿論…今夜はたっぷりと双月を食べさせてくれるんでしょう?」
「ちょっ…ライっ!ここじゃっ…」
「ここじゃなきゃいいんでしょ?ふふ…今夜楽しみにしてる」
小さく呟いたラキに何事かと尋ねる前に、いきなりソファに押し倒されてしまい、そのまま深く唇を重ねられて。
唇を離したライは紅い唇に妖し気な笑みを浮かべて、双月の襟元を乱してゆき、今までも何度かこの部屋で抱かれた事を思い出した双月は、真っ赤になりながら狼狽え、その様子を見下ろすライは満足そうに笑い、証としてその乱して露わになった白い首筋に口付けをして吸い上げ、所有印を残してやるのだった。
今夜は自分がどうなってしまうのか…双月はしっかりと分かってしまい、ライが帰ってくるまでにしっかりと身支度を済ませてしまうのであった……
それぞれの恋人達に幸せあれ☆
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