お父さんとなったシオンさん。
怖いけど、強くてカッコ良くて…誰より、兄さんを大事にしてくれる人。
おれの大切なお父さん…
最近 悩んでるのは知ってる…
それは 兄さんの事だ。
兄さんは常におれを心配して、同じ仮宿のホテルでも、傍にいてくれる。
特にホテルにいても最近はカル二ィフィさんがおれを攫おうと突然やってくるから、余計に傍を離れ様としない。
その為に、シオンさんは兄さんと二人きりで過ごしたり、その…愛し合ったりとか出来てない…
それにシオンさんが悩んで、少し…結構 機嫌が悪い…気が する…
愛し合う時…いつもおれがいたら、兄さん 素直にシオンさんに甘えられないだろうし…
でも、二人きりにしようとすれば、すぐに兄さんは心配しておれを呼び出しちゃう…
なんとか、二人きりで…誰にも邪魔されずに過ごせる所ってないかな…?
「じゃあ ジャワイとかどうだい?」
「ジャワイ?」
丁度 プロンテラにあるソードマンギルドから出て来た所で、バードの双月さんに会って、お茶を飲みながら相談した所、そんな答えが返ってきた。
「そう ジャワイ島って行ってね、イズルードから行ける島だけど、既婚者しか行けないんだよ。二人きりで過ごす為だけのカップルの島だね。
そこの島行きのチケットを買ってシオンくん達にプレゼントしたらどうだい?
二人が旅行に行く時は…ボクも君達のホテルに泊まる様にすれば、イクスくんも安心するんじゃないかな?」
双月さんの提案に、おれは目を輝かせる。
それならば、シオンさんと兄さんはゆっくり二人きりで過ごせるっ
「ジャワイ島へのチケットは、100…000ゼニー…かぁ…」
双月さんと別れ、ジャワイ島への金額を調べると、その0の数を数えながら、思わず溜息をついてしまう。
「あんまり売れる様なの持ってないしな…誰かに借りる…いやっ それはダメだっ
時間掛かっちゃうけど…地道に稼ぐしかないよね…」
倉庫を見て、売れそうな物を見るが大した物は無くて、誰かに借金をしてお金を作ろうかとも思ったけど、それはプレゼントにはならないと思い、首を横に振って決意を新たにする。
けして、兄さん達に気付かれない様に、たまにルティさん達に手伝って貰い、プロンテラで買い取って貰ったりして(ちょくちょく、おれを買いたいって人が多くて困ったけど…)少しづつだけど、貯まっていった。
「後 少しなんだけどな…」
ゼニーが入った袋を見ながら、小さくため息をつく。
あれから未だに目標額には届いていない。
アカデミーの片隅で悩んでいた…そんな時だった。
「やぁイシュアくん?目標額にはいったかい?」
「双月さんっ」
いきなりアカデミーに現れた双月さんに驚いた様に声を上げる。
なんでここにいるんだろう…?
「その顔は…まだみたいだね?」
「はい…中々難しくて…」
「…じゃあさ ボクの手伝いをしてくれないかな?バイト代弾むよ?」
「え…?」
にこやかな笑顔でバイトを持ちかけてきた双月さんに、おれは驚きを隠せなかった。
手伝いってなんだろ…?
そう疑問に思いながらも、おれは促され、双月さんについてゆく。
着いた所は人通りの多いプロンテラの噴水前だった。
その噴水の所に腰掛けて、背中に背負ったリュートを双月さんは手に取る。
「ボクの弾く曲に合わせて歌う事…それがボクの手伝いだよ」
「え…?えぇっ!?歌って…おれっ バードでも…アコライトとかでもないしっ!
ソードマンですから…歌なんてっ」
「スキルもなにも必要ないよ…君はとても綺麗な声をしてる…
この曲に合わせて歌ってごらん?
想いを込めて…」
慌てるおれに双月さんは優しげな笑みを浮かべて、歌う事を促して…
どうしようと青ざめるおれの耳に 双月さんのリュートの旋律が響く。
この曲は…よく皆で宴会したりした時に、双月さんが弾いてくれる曲…グロリアに似た…
愛しい人を想う 愛の歌…
まるでその旋律に引き込まれる様に、自然とおれの口から歌が紡がれる。
ー愛しい人 愛しい人
貴方の幸せを祝福させて…
愛しい人 愛しい人
貴方の幸せを祈らせて…
私はただ 今は貴方の為に歌う事しか出来ないけど…
力の無い私は 貴方の為に祈る事しか出来ないけど…
それでも誰よりも愛おしいと思うの…
貴方の姿を思い浮かべる度に この胸が高鳴るの…
切なく胸が締め付けられて 貴方の姿を追い求める………ー
歌いながら浮かぶのは 大好きな兄さん…シオンさん…
そして…ゴーストさんの姿が思い浮かんで…とても切なくなりながら、おれは精一杯双月さんのリュートに合わせて歌った。
この歌を…ゴーストさんが聞いてくれたらいいのに…
最後の旋律が鳴りやんで、目を開いたおれの前には沢山の人だかりが出来ていて、思わず目を見開く。
「ぼうやっ いい歌だったよっ」
「ソードマンなのに大したもんだっ」
「いい声だったわねぇ~」
次から次に拍手と声を掛けて貰い、びっくりして後ろにいる双月さんを見ると、嬉しそうに微笑む双月さんがそこにいて、立ち上がると観客の皆さんに頭を下げて、おれも慌てて頭を下げてお辞儀をしたのだった。
「今日は有難う イシュアくん。
これが今日のバイト代だよ?」
「あ…こんなに一杯…」
「いいや 君の歌声なら、これでも少ない位だ…
さぁ ジャワイ行きのチケットを買っておいで?」
「はい…有難うございますっ!!」
プロのカフェで渡されたゼニーの金額におれは更に驚いてしまうが、双月さんは優しげな顔で笑っておれの頭を撫でて、促してくれた。
すぐに一緒にイズルードに向かい、ジャワイ行きのチケットを買ってからホテルに戻る。
「兄さん シオンさん…これ…プレゼントです…」
「イシュア…これ…」
兄さんにチケットを渡すと、さすがに兄さんは驚いた様におれを見る。
「二人で過ごして来てほしいって言う、君らの子供からのプレゼントだよ?
行く日にはボクもイシュアくんに付いててあげるから、行っておいでよ」
おれ一人残していけないという表情をした兄さんに、双月さんは隣に立って兄さんを安心させる様に諭してくれる。
「…ありがとな イシュア?じゃあ…行かせて貰う…」
「……」
やっと受け取ってくれた兄さんは少し恥ずかしそうにおれに礼を言って、後ろにいたシオンさんは、何も言わなかったけど、目が合ったら 少しだけ微笑んでくれた。
二人の傍に入れないのは少し寂しいけど 楽しんできて欲しいから…
だから今日は 二人の間で眠るんだ…
大好きな兄さんとシオンさん…
ママとパパ…大好きっ!
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COMMENT
No Title
こんばんわ、東雲です。
そして微妙に追加した最近の悩み(?)というプチネタ拾って下さり、有難うございます<(_ _)>
未転一次職が稼ぐには大変な額!! と思いながら、ジャワイ島にこの二人、行けるのか? と疑問に思ってしまいました。きっとアサシンギルドの関係者というよりシオンの脅迫めいた目つきでVIP待遇でジャワイに行けるだろうなぁと想像して一人で笑ってました。
イシュアの歌は、ゴースト聞いたと思います。だけどイシュアが見つける前に人混みに紛れて消えて行ったんじゃないかなぁーって。あぁ早くゴーストの過去話書かなくちゃ、純情っぽい二人の恋が進展しない気が。過去話書く前に書かないといけないモノも手付かず……。自分がもう一人欲しいけど、想像したら怖いからやっぱり要らないなと思った東雲でした。
乱文、失礼します。
東雲様
つい…なんか切実なシオンの悩みを叶えられないかなぁと考えて…イシュアが大好きな二人の為に子供なりに頑張ったら可愛いかな~…シオンとイクスが喜んでくれるかな~
とか、妄想して一気に頭の中に出来た話でした☆
そして、ジャワイ島行きの金額調べたら、こりゃあ一人じゃあイシュアは無理だと考えて、双月に協力をお願いしてみたというw
元からイシュアとルティは歌が上手い設定だったので、歌わせてみよう…そして、その歌を密かに聞いたゴーストが、恋心を自覚したりとかして…きゃーーwwとか 妄想しまくってこうなったとか…
暴走しかけて済みません;
きっと シオン&イクスコンビならば、ジャワイには同性でも脅したり、アサシンギルドから手を回して行ってくれると♪
そして、スィートルームとかでイチャイチャするんですよw
うへへへwww
ゴースト&イシュアは 進展は中々しなさそうですよねぇ…
でも、暫くはイシュアはソードマンでいるので、ゆっくりとこの二人の場合は進展していけばいいのかなぁとか☆
イシュアがクルセになってからでもいいと思いますしw
しかし…イシュアは成長しても、身長もあまり伸びませんし、可愛いままの設定なので、ゴーストやイクスはクルセになって遠征とかイシュアが行ったりしたら、ハラハラでしょうねぇ…
なんせ、狼の群れに羊が一匹…みたいな状況ですし(爆)
とか、あほうな事ばかり考えてしまってました…脱線しまくりで済みません(汗)
もう一人の自分…居たら楽かもですが…こんな自分、もう一人いても大して効率良くないし、ウザいから要らないwww
有難うございましたw