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雪の華が咲く頃に

オンラインゲーム 『ラグナロクオンライン』の小説を書いています。 内容はBL系が多くなると思いますので、 ご理解頂けない方、嫌悪感がある方 などの拝見はお控下さいます様、 宜しくお願い申し上げます。 先に カテゴリ『初めに』をご覧になって下さい。

   

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二度と君を傷付けられない様に…①

久々でございます☆
中々リアルが忙し過ぎて書き進めれませんでしたが
やっと一本書きあがりましたので、アップします~

ってか 1話で完結予定がまたもや2話になってしまった…
いやある意味2話で収まっただけでもマシか?
って事で、第1話でございます。

六葉さんにかなり前に宣言していた
紫苑とルティの話に向かう前に、どうしても双月のこの話だけは
先に書きたいと…しておきながら 随分時間がたってしまいました…
この話はずっと書きたかったのですが、紫苑達の話を書いた後だと
遅い内容になってしまうので、本編をそのまま放置して書き書きしちゃいました。

そしてこの話の続きを六葉さんに投げつけてみると…(マテ
そんな訳で六葉さんに捧げます☆
この話を書く為にスキルを見せて下さり有難うございます!
それなのに、やはり書くときになればどうギロクロが動くか分からなくなってきてしまい
まともにスキルでどう戦うのがちゃんと書けなかった…
間違っていたらごめんなさい…



イグドラシルの息子 双月…
その夫ライも知らない 双月の過去が今……









「双月…十分気を付けて行くんだよ?」
「大丈夫だよ 大した任務じゃないし、琥珀もいるからね?心配しないで?」

アサシンギルド 常夜の月牙への依頼内容に、古木の枝を折って皆で倒して楽しむ亜空間に、けして強くは無いモンスター達が大量に走り回っている状態になっているので、それを退治して欲しいとの内容であった。

様子を見に行った仲間の報告でも、ぽりんやデザートウルフなどの低レベルなモンスターに、せいぜい強いと言ってもプティット位であり、レベル的にも低いメンバーでも問題無い状態で、丁度イクスやシオン、シノなどの敏腕メンバーは皆他の任務に出ており、あまり経験が無いメンバーに良い経験だと任務が回り、それのフォロー役として丁度任務から帰ってきた琥珀と、仕事の手が空いている双月も同伴する事になった。

あくまでこのギルドでは隊長補佐と言う事務的作業が主な立場である双月を同伴させるのは、ライ的にはかなり悩む事ではあったのだが、人手不足や経験が無いメンバーだけだと何かあった時に対処出来ない為、自分がついて行くと言う双月を渋々許可しする事にした。
それでも中々離れられないライを慰め、双月はこのアサシンギルドに来て初めての任務に向かったのである。



「わー…本当に何か色々いるねぇ…」


フェイヨンの亜空間へと向かった双月達は、そこで跳ね回る大量のぽりんや子デザ、ピッキなどのモンスターにのんびりとした声を上げる。


「見に行った仲間からの報告でも、せいぜい強いのはプティット位って言ってましたし、これなら手分けして狩りに出ても大丈夫じゃないですか?」


まだ年若いロードナイトの青年がペコペコの上から槍を手にして元気に双月に伺う。


「そうだね…少し一緒に行動して様子を見てから、手分けして倒そうか?
もし離れた所で強い敵が現れた時は必ず琥珀か僕を呼んでね?
まぁ、僕よりは君らの方が強いけどさ」


そういいながら、今回のメンバーである、ロードナイトの青年とハイウィザード年若い女性に声を掛け、それぞれが武器を構えた…


 


「きゃぁぁっっ!!!」


それから30分程たっても何も変化は無く、いつでも駆けつけられる位置でそれぞれ四方に分かれて散らばったモンスターを狩っていたいたその時であった、奥からハイウィズの女性…ルーシアの悲鳴がこだまし、それに双月は目を見開く。


「ルーシアっ!?」

一番近くに居た双月は急いでその場に駆けつけると、背中から切り付けられたルーシアを目にして慌てて駆け寄る。
周りを警戒するが、彼女を切り付ける様な敵やモンスターの気配は無く、素早く木の影まで連れて来ると、ヒールのスクロールでその傷を触れさせて癒してやる。

「双月っ!一体どうしたのっ?」

そんな中、他にいた琥珀とロードナイトのセルアが駆けつけてきて、ルーシアの様子に警戒をし、あたりを見回す。

「一体何がいたん…っぐぁっっ!!」
「セルアっっ!!」

倒れたルーシアとその傷を治す双月を守る様にその周辺をペコペコを操り警戒をしていたセルアは突然悲鳴を上げてペコペコから転げ落ちてしまった。
気を失って倒れたその背中には、いつの間にか大量の矢が刺さっており、思わず双月は青ざめる。
ルーシアを抱えて傍に駆け寄り、その体の様子を確認するも、その傷がかなり深い事に唇を噛み、そして…

「っ!?双月っ!こんな所でその姿になっちゃダメだっ」

髪のゴムを外して、ふわりと妖精である姿に戻った双月に、振り返った琥珀は声を荒げる。

「大丈夫…すぐに治して元に戻るからっ…!?」
「っ!?」

心配そうに声を荒げる琥珀に、少しだけ双月は笑ってやり、セルアの矢を抜くと、その背中を治癒を始めたその時、琥珀と双月の間に突然火柱が上がり。

「なっ…!?ぐぅっっ!!」
「琥珀っっ!!ああぁぁぁっっっ!!!」

足元に上がった火柱を避けて背後に飛び退いた琥珀は、足を地面につけた瞬間、地面から頭を突然出してきた食人植物に足を噛み付かれ、その痛みで一瞬で再びその場を飛び退いたまさにその時、琥珀の様子を驚く双月から断末魔の様な悲痛な悲鳴が響き渡り、琥珀は目を見開く。

そこには、美しい羽根を矢で射ぬかれ、羽根を砕かれた双月がそのまま長い翠の髪を揺らして地面へと倒れこんだ姿であった。

「双月っっ!!くそっ!くぅっ…!」
「くくくっっ!この時をずっと待っていたっ!」

双月の傍に行こうとするも、その行く手を阻むかの様に四方から大量の矢やファイヤボルトなどの魔法、足を地に付けた途端ジェネリックの食人植物が姿を現し噛み付き、怪我をしながらも致命傷になるのは何とか避ける琥珀の耳に、低く楽しげな声が響いてきた。

「一人だと滅多に捕まらない上に、アサシンギルドなんぞに入ってくれたから益々手が出しにくくなったが…やはり仲間がいると、貴様は自分が疎かになる」
「貴様っ!手を離せっっ」

唐突に木の陰から姿を現したのは、5~60代位の小太りなジェネリックであった。

羽根を砕かれ倒れる双月の髪を掴んで顔を上げさせながら、嬉しげに笑うその男に、琥珀は思わず酷い嫌悪感を覚え思わず叫ぶが、火柱の向こうで必死に攻撃を躱す琥珀をその男は下卑た笑いを向けて。

「まぁ、貴様もここで殺される運命だ。こいつは貰っていくぞ?
ずっと…ずっと追い求めてきたあのイグドラシルの子…
こいつを細部まで研究するのが儂の夢でなぁ…
やっとその願いが叶う…
こいつを捕える為にずっと研究してきたのが、無駄ではなかったわい。
くくくく…きっとこいつとはすぐにあの世で会えるだろう」

そういうジェネリックの傍に現れたルーンナイトが双月を抱きかかえ、ジェネリックは一緒に亜空間からの出入り口へ足を向ける。

(ダメだっ…!双月を渡しちゃだめだっっ!!)

一体連れて行かれた双月がどうなるか…それは想像するよりもずっと容易く、青ざめた琥珀は攻撃を避けながらカタールを握りしめる。

《ハルシネーションウォーク》

ギロチンクロスとしての身体能力を一気に上げるスキルを瞬時に開放した琥珀の瞳が鋭い金色に光り、獲物を狙う獣の様な素早さで身を躍らせる。

《ローリングカッターっ クロスリッパースラッシャー!》

遠方から隠れて攻撃してくる相手を的確に捕え、回転をしながら一気に間を詰めて攻撃を繰り出す。
まるでハヤブサの様な目も留まらぬ速さで、攻撃が当たろうと躊躇する事無くその相手を切り捨ててゆき。
攻撃をしてきた相手を全て切り捨て、やっと琥珀は木から降り、地面へ足を付けると、そのまま崩れ落ちる。
相手を倒す事だけを重視し過ぎて、自分の体に当たる攻撃を避けなかった為、至る所に怪我を負い、血が溢れ、カタールを握る手も相手の血か自分の血か分からない程に真っ赤になっていた。

「双月は……まだ…追える……」

一番初めにルーンナイトに密かに傷痕を付けていた為、その暗殺者として育てられていた時の特殊な能力で、傷痕を付けた相手が例え目の前に居なくともその気配をしっかり感じる事が出来る琥珀は、取り出した止血剤を太腿に打ち込み無理矢理出血を止め、酷い傷にだけ布を巻きつけると立ち上がり、再びその場から走り出す。

『琥珀さん?大丈夫ですか…?』

ふと、任務中である筈のシズクからのウィスが突然繋がり、酷く心配そうな控えめな声で尋ねられる。
思わずこの偶然に驚く琥珀であったが、その走りは止める事無くその呼びかけに返事を返す。

『良かった…シズク…お願い。フェイヨンに人をよこしてっ!
ルーシア達が倒れてる。双月が浚われた…今 後追ってる。後で連絡する』

ウィスの向こうでシズクの驚く声が聞こえたが、一方的にウィスを切り、感じる気配を木々を飛びながらその距離を近付けてゆく。
シズクならばあれだけでもしっかりフォローしてくれるのは分かっていた。
後の事は彼女に全て任せ、自分は双月の後を追うことだけに集中する。

双月を連れた一行が亜空間から抜け出す頃に何とか間に合い、出た場所でワープポータルに乗る
一瞬、姿を消しその中へと入りこむ。


(ここ…どこだ…?)

ワープポータルを出た瞬間、即座に気付かれ無い様に距離を取り、姿を消したまま少し離れた場所から様子を伺う。
目の前にあったのは古い建物であり、当たりには似たような古びた建物が並んで、酷く埃っぽい。

(ベインズ…?)

思い当たる町の名前を頭の中で呟くが、双月を抱えたまま一行が中に入るのに、静かに背後から着いていく。
地下に下りた先は外見とは違い、白で統一された無機質な研究施設になっており、その中を小太りのジェネリックと双月を抱えたルーンナイト、それにアークビショップに、護衛役であろうか、ギロチンクロスにシャドーチェイサー、修羅などが揃って共に中へと歩いていた。


(今の俺一人じゃ…双月を助け出すの…無理だ……双月…ごめん…必ず助けに来るから……っ)

気配や血の匂いを感じ取られない様に距離を取りながら様子を伺っていた琥珀は、護衛役であろうギロチンクロス達を相手に戦い、そこから無事双月を救い出して逃げるだけの体力が残っていない事を冷静に何とか判断し、悔しそうに奥へと運ばれていく双月を見送りながら、建物の構造を全て記憶すると、唇を噛みしめて蝶の羽を潰したのであった……




「琥珀さんっっ」
「琥珀くんっ!なんて怪我だっ…早くアヤメの所へっ」

琥珀からの情報を今か今かと待っていたシズクとライは、常夜の月牙のギルドに現れた血まみれの琥珀の姿を見て青ざめる。
琥珀は思わず呻き蹲るが、駆け寄ってきたライを泣きそうな顔で見上げる。

「ごめ…マスターっ…双月を…浚われたっ…
あいつら…今回こっちが手薄になる様に色んな事件を同時に起こしたのは…きっとあいつらだっ…
双月がここから出てくるの…狙ってた…ごめんなさい…守りきれなかったっ…」

まるで子供の様に言葉に詰まりながら話す琥珀の目には涙が溢れ、縋る様にライの服の袖を握り締める。
ライは今すぐにでも双月の元に走り出しそうな自分を何とか抑えると、その頭をそっと撫でてやる。

「いや…その事を見抜けなかった僕の責任だ。
大丈夫…琥珀くん。僕が助けに行くから、君は休んで待っていて?」
「あの建物の場所や双月が監禁される部屋…全ての見取り図は全部俺が覚えてる…
だから、俺も行く。
シズク…ヒールを…」
「でも…琥珀さんっ…」
「そんな体で無理だ…ちゃんと休むんだ」
「あの場所知ってるの俺だけだよ?
今すぐにでも行かないと…双月が危ない…だから俺も行く。
…アヤメ、少しの間だけでもいい。俺を動ける様にして?」

一緒に助けに行くと言う琥珀をシズクとライは止めようとするが、琥珀は真っ直ぐにライを見上げ宣言し、その背後に姿を現したアヤメに視線を向けると、静かな声で願い。

「後から暫くは寝込むぞ?」
「それでも構わない。
俺は…もう誰も失いたくないんだ。そうでしょ?マスター?」

アヤメの溜息と共に吐き出された言葉に小さく笑い、再びライを見上げた琥珀は、迷いの無い声で問いかけた。

「マスター…あの男…双月を攫った奴…昔も双月を狙ってたみたいだ。多分、あのサーシャリーって男が…知ってるかもしれない……」


『あぁ…多分ディガンタだ。あのおっさん、まだ生きていやがったのか…あの男の双月に対する執着心は変態だ。30数年前双月を捕えた時も、その実験は惨たらしいもんだった。腕や足や、至る所を串刺しにしたり、焼いてみたりして、双月が悲鳴を上げる姿をそれはもう喜んでたな…そんなのが数日続いて、今度は双月を散々犯して、切り刻むってのが分かったから、その前日に俺が連れ出したんだよ』


そう ライも知らない双月の話を、サーシャリーは語り始めた……

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