「ぅっ…っ…」
「目覚めたか」
全身に感じる冷たさを感じながら、双月は小さく声を漏らしながら意識をゆっくりと浮上させる。
それと共に聞こえてきた聞きなれない声に、眩しそうに瞳を開く。
「ここ…は……?っ…!」
ぼんやりとする意識の中、見慣れない景色を回らない頭で見回し、そして動こうとした瞬間、自分の手首から冷たく重い感覚がして、更に耳障りな鎖の音と、目の前にいた男の顔に一気に意識が覚醒に、手首の痛みに顔を歪める。
「ほぅほぅ…やはり美しい。
このまま傷をつけずにコレクションしたいくらいだわい」
「お前は……まだ生きていたのか……あれから30年以上たったと言うのに、しつこいね…」
一糸纏わぬ生まれたままの姿で両手を天井から鎖で繋げられ吊るされている双月の姿に、小太りのジェネリックの男は嬉しそうにその顎に手を掛けて上を向かせて、下卑た笑みを浮かべて。
その男…ディガンタに見覚えがあった双月は呆れた様な顔で吐き捨てる様に呟き。
「当たり前だ。あの時…その美しい身体を貪り…そしてあらゆる実験や解剖をする予定だったのに、結局どれだけ痛みに耐えられるか、自分でその傷を治癒出来るかの実験だけで、サーシャリィーのバカが裏切ってお前を連れ去って、おまけに騎士団やらに密告したお蔭で儂も大変な目に合わされた。
何とか死ぬ事は免れて、お前を一度捕えデータを一部取っていたからな…
お前のその身を狙っている他の組織に入る事が出来たのだ…本当に長かったよ…イグドラシルの子よ」
「っ…っ…!」
その太い指が顎から首筋、胸元へと降りてくると、その嫌悪感に双月は肌を思わず震わせ、唇を嚙み締める。
「お前を捕まえる為にずっとあれから研究したよ。
お前の弱点はどこだろうとか、どうすれば一番捕まえられるだろうかとか…
本当にお前はすぐに姿を消してしまうから捕まえ難い上に…アサシンギルドに入って、更に半魔のくせに人間様と結婚までしやがって…散々愛されてるみたいだのぉ?」
「くぅっ!やめっっ!!」
愛おしげにその白い肌に指を這わせながら甘く絡み付く様に囁くディガンタは、不意に憎々しげに鼻息を荒くして、その白い胸に幾つも刻まれているライからの所有印を指でなぞった後、いきなりその首筋に吸い付き、双月は目を見開きながら悲鳴の様な声を上げて嫌がる。
「くくくっっ本当にお前達種族は伴侶以外の相手に触られるのも嫌がるの?ほんに愉快愉快っ」
双月の首筋にあるライの紅い刻印を打ち消す様にその上から吸い上げ、はっきりとした所有印を刻み込んだ男は、初めて露骨に嫌がり狼狽える双月の姿に楽しげに笑い。
「そして今までの研究通りに羽と背中が弱いのは正解だったようだなぁ?
腕や足を貫いても痛がるだけで動けていたから、一体どこが弱点なのか調べる為に苦労したぞ?ほら?これが研究資料だ」
「っ!?きっ…さまっ……っ!」
楽しげに笑うディガンタは双月の頬を撫でながら顔を覗き込み、わざとらしくその大きな体をずらし双月に室内を見せる様にして、その目の前の光景が目のはっきりと飛び込んできた瞬間、双月は翡翠色の瞳を大きく見開き、相手を睨み付ける。
目の前には…大きなカプセルがいくつも並び、その中には至る所が切り刻まれた妖精や恐らく妖精との間に生まれた半魔の人間達が惨たらしい姿となり、息絶えたにも関わらず、まるでコレクションの様にその中に浮かんでいた。
「ここにいるよりも沢山の妖精や半魔達を狩って、お前の弱点を探したのだよ。
そしたら皆共通する場所があってな…それが羽や、背中だったのだ。
お前も他と違わずそこが弱点だったのぉ?」
「くぅっ!!さわっ…るなっ…!
こんな…僕を捕まえる為だけにっ…こんな酷い事をっ……っっ」
「それだけお前には価値があるのだ?
研究者ならば皆がお前の骨の髄まで調べたいであろう?
イグドラシルの樹を傷つけたり研究するのはタブーではあるが、お前ならばその遺伝子や力を備えながらも好きにしていいからのぉ…
おおっと…自害されたり、スキルを使われても困るからな…
幾らスキルが使えない様に施された部屋と言ってもお前は十分気を付けねばならん…
こうして…」
「っ…んぐっっ!!」
絶望と悲しみ、そして憎悪に満ちた目で睨み付ける双月をねっとりした視線を向け、嫌悪する双月の肌の感触を楽しむ様に指を這わせながら、その指先を背中へと進め、その悍ましい感覚に唇を噛み締める。
そんな絶対的な支配下に置いたディガンタは心の奥底から満足そうな笑みを浮かべると、思い出した様に猿轡を取出し、口を指で無理矢理こじ開けると、黒い球体を口に咥えさせ、両側についた黒いベルトを頭の後ろで結んでやり。
「これで舌を噛み切ったりは出来んだろう?
さぁて…まずはオサライからだ…
もう一度昔と同じ様に無理矢理妖精の力を引き出せる様に、その体を余すところ無く傷つけてやろう?
くくくっ!あぁ…双月?昔を思い出すだろう?」
猿轡を咥えさせた双月を見下ろし、心底楽しげ笑うディガンタのその手に太い鞭が手にあり、それを目にした双月はこれからくるであろう、あの30数年前の痛みが再びくる事に耐える様に目を閉じ項垂れるのであった…
「この建物?」
「うん…間違いない。この扉の先に地下へ通じる階段がある。その先に研究室がある。双月がいる場所の手前の方で、護衛役のギロチンクロスに修羅、ロードナイト、シャドーチェイサーにアークビショップが揃ってる。
二人で戦えば、そこまで大変な相手じゃないと思う」
再び扉の前に来た琥珀は、尋ねてくるライに向かって、内部と敵となる相手の事を伝える。
血を洗い流し、服を着替えた琥珀は、至る所を怪我はしているが、今はアヤメが作った鎮痛剤やその他の薬が効いているのと、元からの強靭な精神力のおかげで、微塵にもその怪我に影響される事無く、隣にいるライを伺う。
「大丈夫だよ…琥珀くん。全て僕が倒すよ」
「いくらマスターでも、それは無理…」
「無理じゃないよ…僕の双月を奪った罪…しっかり償って貰わないとね…」
「っ…!」
ライの発言に琥珀は慌てるが、内部に抑え込まれたライの殺気を言葉と共に感じた琥珀は、思わず唾液を飲み込み圧倒されてしまう。
(マスターが…本気で怒ってる……)
今まで感じた事ない程のライの深い奥底にある殺気に、一瞬震えそうになるのを堪え、琥珀はライを案内する為に先頭を素早く進んで行くのであった…
「邪魔するよ?」
「へぇ…本当にきやがったな?アサシンギルドのイヌ共」
複雑に入り組んだ廊下を迷う事無く進んだ琥珀は、双月がいるだろう研究室へ向かう扉に立つと、ライは躊躇する事無く扉を開き、真正面からその中へと入って行き、来るのが分かっていたのか、見下した様な笑みを浮かべながらギロチンクロスの男がライを迎える。
「この先に双月がいるね?」
「あのイグドラシルの息子なら、この奥で変態ジェネがイイコトしてると思うぜ?」
「そう…じゃあ…通して貰うよ?」
「何言って……がっ!?」
どこかにこやかに尋ねたライに、見下したままの態度で背後を顎でしゃくり教えたギロチンクロスは、下卑た笑いを低く漏らすが、その言葉にライの気配が一瞬で変わる。
それに気付くも遅く、いきなり自分の周りの重力が急激に重くなった様に、ギロチンクロスは思わず片足を地面に付けて崩れ落ちてしまい。
他のメンバーはと、その息すらうまく出来ない強力に重い重力の中、気配を探るが、殆ど同じく膝を付いて動けなくなり、辛うじてルーンナイトは立ってはいるが、剣で何とか支えている状態で、アークビショップに至っては、口から泡を吐き白目を剥いて既に地面に転がっていた。
「ぐっ…てめっ…一体っ…がっっ!!」
《ソウルブレイカー》
「てめぇらは喉を潰してから、ゆっくり切り刻んでやらねぇと気が済まないが…双月の所に早く行きたいから一瞬で終わらせてやるよ…」
「っっっ―――っっ!!!!」
何とか立っていたロードナイトは、そのままライに向かって反撃をしようとした瞬間、目にも止まらぬ速さでライがその場から消え、ロードナイトは悲鳴すら上げず胸を切り裂かれその場に転がり、深い金色の瞳の色を深くしたライの低い声に、その場で意識のある者達は声にすらならない悲鳴を上げていた。
『ねぇ…ライ もし僕が敵に捕まったらどうする?』
『勿論助けに行くよ!』
(あぁ…これ…この間のライとの会話だ……)
混濁する意識の中、双月は夢か現実が分からない状態でその会話に耳を傾ける。
『でも、アサシンギルドは依頼が無きゃ勝手に人を殺したり出来ないでしょ?
ライは隊長だし、皆を守っていかなきゃいけない。
だから、もし僕が捕まって、相手が依頼の無い人間や組織だった場合は、僕を助けたらダメだよ?』
『知らなかった?隊長ってのは、その状況に応じて、隊長の判断で殺してもいいんだよ?
相手が社会的に害を齎すとか、非道な事をしてる相手とかね?
だから心配しないで…双月?
何があっても、僕が必ず助けに行くから…その為に僕は隊長になったんだよ』
(そうだ…絶対に…ライが助けに来てくれる…絶対に…だから…僕は死んだら…ダメなんだ…自害する事も…最後の力を出せば出来るけど……ライが助けに来てくれるから……)
「っっっーーっ!!」
今にも途切れそうな意識の中、空気を切る音がしたと同時に肩から背中に掛けて、凄まじい痛みが走り、背中を仰け反らせ、双月は口を塞がれているせいで悲鳴すら上げられず、涙が零れ落ちてゆく。
何度となく意識を失いそうになりながらも、太い鞭から与えられる痛みにその意識を無理矢理浮上させられていた。
「ほれ…早く本来の姿にならんと、その傷も治癒出来んだろう?
このままだと死んでしまうぞ?
早くあの美しい姿にならんか…そして儂がそのイグドラシルの力を持つお前の奥底まで犯してやるのだからなぁ」
太すぎる鞭から次々に与えられる攻撃は、皮膚を裂けさせ、肉を抉り、血が白い肌を伝ってゆき。
肩や胸、太腿や腕、特に肩から背中に掛けてその鞭は何度と無く振り下ろされ、何十年前の痛みや恐怖を否応でも髣髴させる。
それでもあの時程痛くても怖くはない。帰る場所があるのだから…
(このままじゃ…さすがに僕でも死ぬよな…
本当はライに妖精の姿でも一番に抱いて欲しかった
んだけど…しょうがない…よね…
この状態を治さないと…死んだらライと会えない…きっと、他の男に犯されようとも、ライは僕が死ぬ事なんて望まないから……)
自分を叩き傷付けるディガンタが、妖精の姿となった途端、今度は犯してくるだろう事ははっきりと分かっていたが、ここで今死ぬ訳にはいかないと、犯される覚悟を決めて双月は妖精の姿へと変化しよう…としたその時、いきなり研究室の扉が激しい音を立てたのに大きく目を見開く。
「いっ…一体なんだっ!?」
あまりにもいきなりの事にディガンタは鞭で双月を再び叩こうとしたその格好のまま動きが止まり、その扉を食い入る様に顔を向けて。
そこには固い扉と共に護衛役だったギロチンクロスが転がっており、そのドアが飛んだ入り口には、紅く濡れた錐とメスを手にしたギロチンクロス…ライが立っていた。
「ひぃっっ!!!」
「てめぇか…ディガンタって男は?」
沢山の妖精や半魔であろう人間達が浮かぶカプセルのその奥の扉から現れたライが目に入った途端、双月は一瞬泣きそうになるが、その涙を何とか堪える。
もうライが迎えに来てくれた…泣く必要は無い…
後はライがここまで来てくれるのを待つだけなのだから…
「俺の大切な双月を…よくそんな姿にしてくれたなぁ?覚悟…出来てんだろ?」
「ひっ…ぃっ…!!がぁっっ!!」
《ソウルブレイカー》
深い金色に光る瞳に睨まれたディガンタは、背筋が凍りつく様な殺気に完全に動けなくなり、言葉すら発する事が出来ず全身を震わせていたが、いきなりライの姿が消えたと思った瞬間、その喉元から血が吹き出し、潰れたカエルの様な醜い声がその口から発せられて。
「簡単に死ねると思うなよ?このクソがっ!
俺の双月を傷つけた様に…てめぇのうす汚ねぇ体をゆっくりと切り刻んでやるから
覚悟しやがれ?」
「……っっ!!!」
喉を潰され声が出せなくなったディガンタは、ライの殺気に全く動けなくなったまま、血に濡れた武器を手に不敵に笑ったその凶悪な笑みに、ただ喉元から血を滴らせながら、恐怖から粗相をした物を床へと広げ、それでも目を見開いたままガタガタと震え続け。
《ポイズンウェポン》
情けない程に青ざめ震えているディガンタの目の前で、取り出した瓶からわざとらしく武器に毒を塗ってやる。
「まずはじっくりと毒に苦しめ?大丈夫…致死量にはしてねぇから?」
《クロスインパクトっ》
にやりとまるで凶悪な猫の目の様に冴え冴えとした金の瞳が細められて、毒を塗った武器をしっかり見せてやってから、その武器を構えるといきなりディガンタの体にクロスインパクトを叩き込む。
それでも殆ど致命傷となる傷を負わせる事無く、体の数か所を切り刻んでやる。
「っっっ―――っっ!!!」
焼け付くかの様な凄まじい痛みに、声があげられないまま体は床へと倒れ、胸を掻き毟りながら自身の粗相した物に塗れながら転げ周り、助けてくれと言わんばかりにその瞳をライへと向けるが、どこまでも冷たい瞳はその姿を一瞥しただけで、すぐに繋がれた双月に向けられ。
「ごめんね…双月…遅くなった…」
もう顔を上げる気力も無いのか、天井から繋がれたまま、顔を俯かせぐったりとしている双月に小さくライは泣きそうな声で囁くと、一気にその鎖を錐で切り裂き、そのまま地面へと崩れ落ちる双月を優しく抱き留めて床へと膝を付く。
「…こんな物まで…着けられて…悲鳴が上げられなくて…辛かったね…双月…」
「はっ…っ…ぁっ……」
唾液と血で濡れた猿轡を外してやると、開いた唇からは溜まっていた唾液が零れ落ちて、空気を求めるかの様に唇を開き、胸を大きく震わせ。
「ラ…イ…?」
「そうだよ…双月…もう少しだけ待っててくれ…双月をこんな目に合わせたクソ野郎を…俺の手で殺す…」
薄らと瞳を開いて見上げる双月に優しく微笑むが、背後で身悶え転がり回って暴れる相手を肩越しに振り返ると、すぐに片手だけで双月を抱き上げて立ち上がり。
片手に持ったメスを握り返し。そのままライは懇願するかの様に憐れに見上げるディガンタを死神の様に冷たい目で見下すと、そのまま腕を振り下ろした…
「双月っ?双月っ…大丈夫?」
「ぅっ…あぁ…ライ……だい じょうぶ……」
全てが終わった後、腕の中でぐったりとしている傷だらけの双月を軽く揺すりながらその様子を伺うと、双月は再びゆっくり瞼を開き、小さな声で答える。
「でも…妖精に代わって…この傷治すだけの…力…もう残ってないから…しばらく…休ませて…?
力が…戻ったら…この傷も自分で治すから……
ライ…ありがとう…きっと来てくれるって…信じて…た……」
今にも泣きそうな顔をしたライを見上げ、そっと血に汚れた手を伸ばしその頬を撫でながら伝えるも、限界だったのか、そのまま意識を失ってしまい。
「双月……ごめん……」
しっかりとその傷ついた華奢な体を抱きしめたライは、苦しそうに呟き、そんな場所に他にもいた職員達を処分してきた琥珀が双月を包むシーツを手に現れるたのであった…
「アヤメくん…双月の傷の具合はどう…?」
「あぁ…かなり酷いな…特に肩から背中に掛けて、何度も打たれてるから肉が抉れてるし…出血もかなり多いみたいだ…羽が出てくる場所がかなり集中してる…
もしかして双月はこの場所が弱点なのか?」
「あぁ…」
アサシンギルドに戻ってきたライ達は待ち構えていたアヤメに双月を託し、その状態を診てもらっていた。
すでに琥珀は帰り着いた途端無理矢理治していた傷が悪化したのか寝込んでしまい、シズクが部屋で看病している。
そんな中、双月を診ていたアヤメはあまりにも痛々しい傷に顔を歪め、うつ伏せにしたその背中の傷にそっと薬を塗ってやる。
「双月の事は…ボクもずっと昔から知ってたよ…
以前…雇われて研究をしていた時…研究者や貴族達は躍起になってイグドラシルの子である双月を探してた…不老不死の薬になるとか…アホな事を貴族達が信じていてさ…
研究者達は禁断でもあるイグドラシルの研究が出来るって…その遺伝子を持つ双月を求めていたんだ…
何度か捕まっても、その度に逃げ出して誰のモノにもならないからこそ…余計に追い求めたんだろうけど…酷いよね…半魔だって生きてる人間だってのにさ…」
「……双月…」
自分と出会った頃には、そんな修羅場を乗り越えてきた事など知る事もなく、ただただ自分に愛情を注ぎ育ててきた双月の過去を改めて思い知る事になり、ライは拳を握りしめる。
成長する速度が遅いから一つの所にはいられないと言って旅を続けていたのは、それだけの常に狙われ続けていたからこそ、流浪の旅をしていたのだ…
自分と会う前からずっと…そして自分と離れた後も…
薬を塗ったアヤメが出て行き、二人きりになったライは優しく双月の髪を撫でてやる。
「ごめんね…双月…もう二度とこんな思いをさせないって言ったのに…ごめん…双月……」
「ん…ライ…だいじょう…ぶ…だよ…?」
今にも泣きそうになりながら、絞り出す様な声で語りかけるライにうっすらと瞳を開けた双月が力無く微笑む。
「やっと……長いあくむから…かいほう…された…気が…する…ありがとう…ライ?
きてくれるって…しんじてた…ぼくは…大丈夫だから…なかない…で……」
苦しそうに、それでもやっと長い間心に闇を落としていた悪夢が、ライから解放された安心感を味わっていた双月は、昔の様にライの頭を撫でて褒めてやると、再び深い眠りへと落ちてしまい。
「双月……こんな時まで…僕の事を気遣わないでよっ…」
自分の頭を撫でてくれた手を握って自分の頬に当てて、掠れた声で双月に訴えると、ライの頬を一滴の涙が零れていったのであった……
ただ静かに…とても静かに…二人の間に夜が訪れた…
双月にとって、解放された日の初めての夜が……
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