―アルデバラン カプラ前
ある晴れた日
春の風が吹いてきた温かな昼下がり
シオンは狩りをしてきたドロップを倉庫に預けていた。
倉庫を閉めて ギルドハウスに戻ろうとしたその時…
「シオンにぃちゃぁぁぁんっっ!!」
悲痛な声と共に
AXであるシオンにいきなり抱きつく小さな姿があった。
「…なんだ…」
一瞬驚いて身構え掛けるも
抱きついてきた存在が、良く知っている者であり
一呼吸置いて見下ろしながら短く尋ねる。
「にぃちゃぁぁん…
クーリィーがいなくなったぁぁ…」
抱きついてきた存在…
若草色の髪に犬耳を付けた小さなハンター
ウォレスが 涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ
泣きがら原因を訴える。
「…いつもいるアルケミと探せ…」
「イルシアにーちゃん アルケミギルドに行っていないんだもん…」
「一人で探せばいいだろう…」
「ずっと探したけどいないんだもんっ
ごのっ ままっ 見つからなかった…ボクっ…
うわぁぁぁぁんっっ!!にーちゃぁんっ
お願いだからっ いっしょ探してよぉぉぉっ」
ため息を付きつつ 面倒な事に巻き込まれたくないシオンはイルシアと探せばいいと言えば、いないと拒否られ、一人で探せばと言えば、その瞬間ウォレスの顔がよりぐしゃぐしゃになり大声で泣き始めてしまい…
「いい加減に…」
「まぁ…あんな小さい子を泣かせて…」
「自分の子供を虐待してるのか…?」
「探してやればいいのに…あのAX…冷たいな…」
「騎士団に通報した方が…」
イクス以外の面倒事には関わりたくないシオンは、ウォレスを突っ撥ね様とするが、カプラを始めとする周りの冷たい視線と声に、青筋を立てながらも、ここで問題を起こせばイクスと始めとしたギルメンに迷惑が掛かる事を覚えた為、振り上げそうな拳を落ち着かせ息を吐き出す。
「わかった…」
「ほんとっ!?有難うっシオンにーちゃんっ!!」
渋々ながらもぼそりと呟いた答えに、ウォレスはパッと顔を明るくして、泣きじゃくった顔に笑顔を見せて抱きついてきた。
傍からみれば ガラの悪いAXの父親と愛らしいハンターの息子
そのものであった…
「どこいったんだろう…」
アルデバランの街の中や外に広がる荒野など至る所を練り歩き
再びカプラ前に戻ってきたシオンとウォレスは石垣に腰を下ろし
ウォレスは再び半泣き状態で小さく不安気に呟く。
「…腹が減ったら戻ってくるんじゃないか?」
「そう…かな…?」
「ウォレス?…と シオン さん?一体どうしたん…ですか…?」
蝶の羽で丁度セーブポイントのカプラ近くに戻ってきたイルシアは
そこにいた あまりにも似つかわしくない2人が揃っているのに驚きつつ
未だにウォレスと違い、人見知りが激しい故、特にシオンが苦手なイルシアは恐る恐る声を掛ける。
「イルシアにーちゃんっ!」
「…後はそいつと探せ…」
現れたイルシアに笑顔を迎えたウォレスを見て、面倒になったシオンは短くそう告げると、その場を後にしようと踵を返す。
その瞬間 後ろから服の裾を強く引っ張る手に思わず足を止める。
ゆっくり 嫌そうに振りかえると、そこには今にも泣きそうな顔でこちらを見上げるウォレスがいた。
「シオンにぃちゃん…」
「後はそいつがいるからいいだろうがっ」
「シオンにーちゃんもいっしょがいいよぉぉぉっ」
「いい加減にっっ!!」
「ちょっと見て…あのアサクロ 子供苛めてるみたいよ?」
「酷いな~…殴ろうとしてるぜ?」
「虐待じゃね?これって…通報した方がいいかもな…」
服の裾を引っ張り自分を止めるウォレスに思わず手が出てしまいそうになり、それを見ていた周りの冒険者達からの声が耳に入り、思わず横の壁を思い切り殴る。
「シ シオンさんっ!?」
「分かった…」
「わぁ~いっ にいちゃん大好きっ!」
いきなりの事に イルシアは目を見開いて驚き慌てるが、シオンは項垂れたままぼそりと答え、その言葉にウォレスは一人 嬉しそうにはしゃいで。
それから一時間後
クーリィーはディルの元で餌付されて ディルのホムンクルス・ゲイルと遊んでいた所を発見されたと言う。
シオンから
「もう少し発見が遅かったら 喰われてたかもな…」
との声に青ざめるウォレスがいた…
暫くアルデバランでは
目つきの悪くガラの悪いAXとアルケミストに
小さく可愛らしいハンターが誘拐された…
と言う噂がたったとか立たなかったとか…
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COMMENT
No Title
自分の子供の様に見られてるウォレスの本当に父親が出てきた時のシオンの反応が楽しみです。
シオンがアルケミと子ハンターを誘拐、と思ったらシオンとイルシアが子ハンターを誘拐したって噂とか!
一人部屋で声殺して笑ってました。ご馳走様でした~。
東雲様
その内、ウォレスの父親も出てくる?かどうか分かりませんが、段々シオンも何だかんだとウォレスを無視出来ないというか、情が沸いてきたみたいなので、現れた時が楽しみですねぇ~w
そして、シオンをイルシアにウォレスが挟まれているのを想像したら、絶対シオンとイルシアは凶悪だと(爆)
また、何かでこの3人の話を書いてみたな~と思います☆
もう1本はもう少しお待ち下さいませ^^;