ぴよぴよぴよ…
ぴよぴよぴよ…
ぴよぴよぴよぴよ…
「ぅっ……」
イシュア3歳
8歳年上の兄 イクスの後を着いていくのが大好きなのだが
その体格差があり
中々追いつく事が出来ない。
イクスが着せた ひよこのつなぎの洋服で
イシュアは本物のひよこの様に その後を懸命に追い掛けてゆく。
でも イクスが一歩足を進める毎に
中々追いつけなくて 時折立ち止まり
全く間が縮まらない事に 泣きそうになるが
ぐっと涙を堪え 必死に足を動かして追いつこうとする。
その姿は必至に母鳥を追いかけるひよこそのもので微笑ましく
兄イクスも その必死になる姿が可愛くて
ついつい 先を歩いてしまう。
ぴよぴよぴよぴよ…べちゃっ!
「ぅっ…ひっくっ…うぁぁぁんっ にーちゃぁぁぁっ」
とうとう足が縺れてしまい
そのまま顔面から倒れ 顔を思い切り打ちつける
暫く その痛みに我慢しようとするが
結局 痛いのと追いつけない悲しさから我慢出来ず
ぼろぼろと大きな目から涙を溢れさせて
大きな声で泣きだしてしまう。
「あ~ ほらっイシュア 泣かない泣かないっ」
そうなると イクスはイシュアの元に戻り
抱き上げてやると 頭を撫でながら慰めてやる。
すっかり泣きやみ また下ろして先をイクスが歩くと
イシュアは必死に着いてくる。
泣きそうな顔で 泣くまいと必死になりながら
なんとか追いつこうと懸命に歩いてくる…
それはイクスの楽しみにひとつであり
イクス自身がイシュアの元を去る頃まで続いていた。
そして現在…
「兄さんっ 早いっ」
「ほら 早く来いよっ」
ソードマンとなったイシュア14歳
ハイプリーストのイクス 22歳
久々に一緒に出かけたのだが
イクスはなんとも身軽に森の中を駆け抜けてゆき
イシュアは必死にその背中を追いかけるが
中々追いつかない。
声を掛けて その足を止めようとするが
イクスは笑いながら振り返り
それでも走るのは止める事なく 先を走り続ける。
(やっべ…可愛い…)
必死に追いかけてくる姿は
昔と変わらず必死で 今にも泣きそうな顔で
大きな瞳を潤ませていて
振りかえりながら イクスは思わずにやけてしまう。
「まっ…ふにゃっ!!」
そして 昔と変わらず 足元を見ていないイシュアは
盛大に前のめりになり転んで 間の抜けた悲鳴を上げる。
「あ~…大丈夫か?イシュア?」
その姿があまりに可愛くて 笑ってしまいそうなのをなんとか堪え
戻ったイクスはイシュアに声掛けてやる。
「にぃさん…ひどいです~ぅ~」
「あぁ すまんすまん…」
手を掴まれ起き上ったイシュアは
汚れた顔で 半泣きになっていて
その頭を撫でて イクスは慰めてやる。
昔と変わらない弟の姿に
イクスはもっと顔をにやけさせてしまいそうになり
そっと抱き寄せると その顔を自分の胸に押し付けて
しっかり抱きしめてやり
昔の様にグロリアを歌ってやる。
昔と変わらない様に 抱きしめグロリアを歌ってくれるイクスに
イシュアは思わず涙が溢れ出てしまい
背中に腕を回して抱きつきながら
思わず泣いてしまう…
『イシュア 大好きだよ』
『にーちゃ だいちゅき』
「イシュア 大好きだよ」
「兄さん 大好き」
昔と変わらない風景に 二人は幸せを噛み締めていた…
そんなイシュアが
実はイクスがイシュアの必死に追いかけてくる姿が可愛くて
わざと追いつけない様にしていた事を知ったのは
その後のお話…
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