「やっぱり心配?ルティ君?」
けして譲れない それぞれの戦いの為に
戦場へと向かっていったメンバー達の安否を考え
浮かない顔をしていたルティは
ミナヅキの声にハッと顔を上げる。
「あ…す 済みません…」
「そないに気にせんとえぇよ?
まぁ 心配やもんなぁ…
戦いに行く以上に 残されたもんはもっと心配や…
仕方あらへんよ…」
申し訳なさそうな顔で謝るルティに
リョウの兄 レイヤは笑みを浮かべて気にしない様に言うと
手を伸ばし そっとその頭を撫でてやる。
「そやっ なぁなぁルティ君?
君がいるリョウのギルドの話してぇなっ!
まだ あんまりリョウのギルドの人達しらへんから
もっとしっと気たいんやっ
やっぱ 大事な弟が大事にしとる家族やから
わいにとっても大事な人達やしなっ」
今にも 色素の無い白銀の瞳が潤み涙が溢れそうな様子に
いきなりレイヤは明るい声でルティにギルドの事を尋ねてくる。
それに少し驚きつつ、それでも置いて行かれてしまい
ただ待つことしか出来ない自分に落ち込みそうになるのを
なんとか浮上させようとするレイヤの気遣いが嬉しくて
やっと笑みを浮かべて頷く。
「はいっ!
っても 僕もまだ、このギルドに来て浅くて…
多分知らない事だらけなんでしょうけど…
まずは…一人だった僕を拾ってくれたイクスさん…
僕 スキルもろくに使えなくて
そんな僕を助けてくれて このギルドに誘って下さいました。
とても綺麗で…まるで青い豹みたいにしなやかな方です。
口は確かに悪いんですけど、とてもメンバー思いで…
文句言いながらも いつも助けてくれているんですっ
料理もとても美味しくて、一人ひとりの事を良く見ていらっしゃるというか…
大抵不機嫌そうな顔はしてますが、恋人のシオンさんの前だと
凄く優しい顔になるんですっ
本当にシオンさんを大好きなんだなって
よく 羨ましくなります!
そしてイクスさんの恋人でもある AXのシオンさんは
とてもとても一途な方で
僕らでもイクスさんと二人きりになったりすると
怒ったりするヤキモチ妬き屋さんです…
でも とても強くて…
ドキドキする位強くて…なんていうか…カッコいいです
それに イクスさんと一緒にいる時は
とても優しい目をしていて
本当にお互い大好きなんだってわかって
そんなお二人を見てるのが 大好きなんですっ」
ルティは いつもよりずっと幼い顔で
家族を自慢する子供の様に頬を高揚させて話をする。
「クリエイターのディルさんは
純製薬なので とても薬を作るのがうまいです
よく、難しい本とか読んでいて…とても静かな方ですけど
怒らせると一番怖いと思います…
ギルドの皆さんの事をやっぱり大事に思っていて
多分皆さんの纏め役とか相談役みたいな感じかのかな?
いつもは無表情なのが多いんですけど
笑うとですね…すっごく素敵なんですっ
なんて言うか…いつもドキドキしちゃいます…」
「ルティ君は ディルさんが好きなのね?」
「っ!?あ…え えと…はぃ…」
ディルの事を話すルティは
今度はまるで恋をする少女の様に頬を赤らめさせて
幸せそうに嬉しそうに話し
それを楽しそうに見ていたミナヅキは
顔を覗き込むと 核心を突き
ルティは耳まで顔を赤らめて 答えながら飲み物を口にして誤魔化す。
「え えぇと…アルさんは ですね…
とても可愛らしい方です…
可愛くて美人で…そして リョウさんの恋人です。
とてもリョウさんを大事にして、お互いを支え合ってる…
春風みたいに優しくて、子供の僕に合わせて、色んな事をお茶を飲みながら話してくれるし、聞いてくれます。
ハイウィザードなんですが、魔法じゃなくて、殴りで敵を倒すんですけど、魔法をうまくつないながら、殴って戦うんですっ
いつもの優しい顔ばかりしか知らなかったけど
そんなアルさんはとっても素敵でしたっ!
そして…僕のギルドマスターの リョウさん…
普段はですね とても明るくて優しくて…
いつもいつも 僕らメンバーの事を考えてくれてます
一次職でまだなんの力の無い僕を
この世界は楽しいんだって…綺麗なんだって
色んな場所に連れていって見せてくれます。
ちょっと情けない所もあったりするんですけど
そこがリョウさんの可愛い所だって思います!
だって 本当はリョウさん すっごくカッコいいんですよ!
僕らを護ろうとする時とか 誰かの為に戦う時とか
本当に格好よかった…
大好きな僕のお兄さんです!
それに…リョウさん すっごくすっごくレイヤさんの事
大事にして そして大好きなんです
そんなリョウさんも 僕 大好きです
僕の大事な大事な家族なんです」
幼い…本来の姿の幼さで満面の幸せそうな笑みを浮かべて
ルティはレイヤを見ながら
とても大事そうにギルメンの事を話し
それを聞いたレイヤは
心底嬉しそうに笑みを浮かべて もう一度ルティの頭を撫でて。
「わいの大事な弟は しっかり大事なモンを見つけて
護ってるんやなぁ…」
「はい!」
嘘の無い とてもとても幸せそうなルティの笑顔に
レイヤは弟リョウがしっかりと幸せを掴んでいた事に
それを護るべく しっかり男になっていた事に
幸せと そして少しの寂しさを感じ
笑みを浮かべたまま 隣にいる最愛の妻 ミナヅキの肩に
そっと顔を埋めた…
「良かったわね?リョウ君が幸せそうで」
ルティを休ませる為に客室用の寝室に通した後
ミナヅキはテーブルに片膝をつき
外を見ているレイヤに声を掛けた。
「そうやな…ホンマ 良かったわ…
もう ちいちゃい弟はおらへんのやな…」
「ふふ 貴方の弟は貴方に良く似て
いい男に育ってるって事よ?
やっぱり寂しい?」
嬉しそうだが どこか寂しそうな顔をしているレイヤの隣に腰掛けたミナヅキは くすくす笑いながらリョウに尋ねる
「まぁ…そうやなぁ…
まだリョウが子供の頃に別れたから
わいの中で まだ子供ってイメージがあってなぁ…」
「じゃあ…子供でも作る?」
「…え?」
軽くため息をつくリョウの顔を覗き込んだミナヅキは
整った美しい顔に笑みを浮かべ 顔を近づけ
驚くレイヤの唇にそっと口づけを落とす。
「リョウ君や…ルティ君みたいな可愛い子供が欲しいわ?」
「ミナヅキ…」
そのままレイヤはミナヅキの頬に指を滑らせて
誘う様なミナヅキの唇を塞いで……
ルティは一人寝室で 床に膝をつき
窓に向かって両手を合わせて祈りを捧げていた
「どうか…どうか神様…
僕は何も皆さんの為に役に立たない身…
皆さんが戦っている中 何も出来ません…
こうやって ただ待ってる事しか…
だから どうか…皆さんが無事である様に
無事に帰ってきます様に…
そして イクスさんの心が…傷が
少しでも癒されます様に…
僕の大事な家族をお護り下さい…」
ぽたり と、ルティの白い頬を伝って床に涙が落ちてゆく
大事な人達が戦っている中
自分だけが安全な場所にいる事のもどかしさ
そして 自分の知らない場所で死んでしまうのではないかという
恐ろしさ…
大事な人達を失うかもしれない…
力の無い自分が情けなく
そして 悔しかった…
「どうぞ…お護り下さい…」
一人 寝る事もなく
ルティは祈り続ける…
大事な家族と 共に戦い続ける様に……
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