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雪の華が咲く頃に

オンラインゲーム 『ラグナロクオンライン』の小説を書いています。 内容はBL系が多くなると思いますので、 ご理解頂けない方、嫌悪感がある方 などの拝見はお控下さいます様、 宜しくお願い申し上げます。 先に カテゴリ『初めに』をご覧になって下さい。

   

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もう一度 恋をしようか…

製造WSのレイジェルさんの過去話などを
ちょっと書いてみたり…

レイジェルと 東雲さんのディルくんの両親 ミコトさんとリディさんは
同じ歳だから 昔の狩り仲間とか言う話を東雲さんと話してた様な…
って 事で、本当に親友同士にしてしまった☆

なぜレイジェルさんが昔から 傘を被っているか…
な お話です☆



あの日は雨が降っていた…
叩きつける強い雨
泥だらけの地面の上に 頭装備の傘が落ちていた…
その傘を染めた血は
強い雨によって 地面へと流れていった……


もう 20年以上昔の事だ……





「お前 もうちっと可愛い格好したらどうだ?」

俺 レイジェルは、目の前を元気よく歩く相方のナイトの女に声を掛けた。

「あん?なんでだ?似合うだろ?」

くるりと振り返った女…セイルは鋭く切れ長な整った目を細め、怪訝そうに答える。

「似合うっちゃあ似合うけど…顔が男っぽいんだから、せめて可愛い装備とかしようとか思わないのか?
キレーな顔はしてんだから、それなりなモンつければ、ちゃんと女に見える?」
「あっはっはっ!べっつに可愛い格好しようとか全然思わないからいいじゃんっ
出来ればナイトの服だって、男物着たいくらいだぜ?
アタシは可愛い女の子を護る為にナイトになったんだし
可愛くなる必要ナシっ」

綺麗なストレートの黒髪を一つに纏め、その上に色気も何もない傘を被るセイルは、豪快な笑い声で笑いながら、
俺の言葉を一喝してしまい。

「そーゆーお前だって 頭装備なんか付けないのかよ?」
「別に俺は狩りの時だけでいいし、あんま興味ない…」
「ふ~ん…
今日の狩りはミコトとリディと双月とだったよな?
ふふふ…リディは最近本当に可愛くなったよな~
やっぱミコトに恋してるせいかな~」

再び元気よく歩き始めたセイルは、俺の言葉に大して興味を持たず、これから一緒に狩りに行く仲間の話を始めてしまった。
どうして俺はこんな女を好きになっちまったんだか…
思わず溜息が出てしまう。
今度…頭装備をプレゼントしたら付けてくれるだろうか…
そう無駄になるかもしれない想いを抱きつつ、きっとその黒髪に似合うだろう乙女のツインリボンを…




セイルが騎士団の一員として、討伐に出かけてから数日後だった…
どんよりとした、今にも雨が降りそうな暗い空をした夕刻
突然俺のウィスが鳴り響いた…
その相手は…

「セイルっ!?」
『はは…うるせぇよ…
しかしなんだな…こんな時に思い浮かぶのって…お前だってのが情けねぇ…』

苦しそうに息を吐き出すセイルの声…

『悪ぃ ドジった…
ごめんだけど…リディ達には…言っててくれ…
レイジェル…ごめんな…一緒に 転生しようって…約束守れねぇや…
でも お前の相方で 良かった…
多分 好き…だったぜ……』

自分が言いたい事だけ言って 突然ウィスは切れた…
それから二度と、セイルにウィスが通じる事は無かった。


それからどうやってセイルがいた場所を見つけだしたかは分からない。
泥だらけになりながら、見つけたセイルは、他のナイト達と一緒に、雨の中横たわっていた。
そしてすぐ近くには、雨に濡れて汚れた傘…
俺はそれを拾い、頭に被った………

「俺だって好きだったんだぜ…
セイル…俺にも…好きだって言わせろよ……」

雨と泥と血に塗れた愛しい女を抱きしめて、冷たくなった唇に自分の唇を重ねた…







「やっぱり今年も来てたね?」
「お前こそ…律儀に毎年来るよな」

プロンテラの日当たりの良い墓地の前に座る俺に声を掛けてきたのは
バードの双月だ。
双月は人懐っこい…あの頃から変わらない笑みを浮かべながら手にしていた花束を墓の前に供える。


「あれから…もう20年…以上たったね…」
「そうだな…すっかりおっさんになっちまったよ…」
「やだなぁ ボクよりずっと若いんだからおっさんなんて言わないでよ」

俺の傍らに立ってぽつりと呟く双月に、苦笑いになりながら俺が答えれば、くすくす笑いながら双月が俺を見下ろしてくる。
あの時から双月だけが姿を変えていない…
その体に流れる血がそうさせてるらしいが、多分歳を食っても、こいつの笑顔はきっと変わらず優しいだろう。
こいつの謳う歌と同じ様に、優しく心地よい笑顔と、そしてその存在。

「ふふ おっきくなったなぁ~」
「40過ぎたオヤジの頭を撫でんな…」
「ボクから見たらまだ十分可愛いよ」


いきなり傘の上から頭を撫でられ、思わず傘のつばを上げて見上げると、悪戯っぽい瞳が見下ろしていた。


あの時…セイルを失った俺を支えてくれたのは、狩り仲間であり親友であった
ミコトやリディ…そして双月達だった。
そんな俺達が必ず一年に一度ここに集まる。
皆の共通の親友 セイルの命日に…
ここで花束とセイルの好きだった酒を供えて
墓の前で皆で語り、双月の曲で皆で歌う。
まぁ…正直宴会だが、賑やかで宴会が大好きだったセイルがきっと喜んでくれるだろうと、命日は泣かずに笑って語り合う事が決まっている。

その内、酒やつまみを持ってミコトやリディが現れ、賑やかに宴会が始まった。
相変わらず仲の良いミコト達から、彼らの子供にも可愛らしい恋人が出来たとか、子供の仲間達の恋の話や…何とも長らく縁遠かった話をたっぷりとされてしまった。

「……なぁセイル…
いつの間にかこんなオヤジになっちまったが…
もう一度恋ってやつをしてみようか…
お前を愛して 本当に幸せだったよ…」

『幸せになれよ?』
「幸せになれよ?」

寄ったリディを解放するミコトを見ながら、すぐ隣にある墓にこっそり話しかけると、セイルがそっと囁いた様な声がして、それに重なる様に双月の声がして俺は目を見開く。

「そ 双月?」
「きっとセイルはそう言ってるよ?」

まるでそこにセイルがいるかの様に、自信ありげな顔で言う双月に驚きながらも、妙に納得してしまう。

「そうだな…そろそろ次の恋をしてみようか。
なぁミコト 今度お前の息子にも久々に会わせろよ?
ちまい時に会ったきりだから、もう俺の事覚えてねぇと思うけど、製薬なら薬作って貰いてぇし
一緒に狩りにでも行ってみてぇからよ?」
「おう 俺達の自慢の息子をちゃんと紹介してやるのだよっ」

にこやかにミコト達と笑いあい、なんだか晴れやかな気分で、俺は思い切り手の伸ばして天を仰いだ。



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