空色の髪に映える、赤いハイビスカスの髪飾り
白く華奢な体を包み込む、桃色の愛らしい着物
化粧をしている訳でも無いのに、赤く染まった頬に艶やかな唇
伏せ目がちの瞼に長い睫が影を落とし
恥じらう様なうれいた表情がなんとも言えず……
高下駄のサンダルで歩き辛そうなイシュアの手を、自分の腕に回させて
サポートしながら歩くリジェクトはその姿を見下ろしながら、ごくりと唾を飲み込む。
「リ…リジェクト…さん…?」
「ん…?なんだ?」
不意に泣きそうな恥ずかしそうな不安そうな顔で見上げてくるイシュアに
またも目を奪われながら、冷静を何とか保ちながら尋ねる。
「あの…やっぱりおれ…この格好おかしいんじゃ…?
なんか…皆さんから…見られてて…
でも…そうですよね…男がこんな格好してたらおかしいですよね…」
そう言われて、視線をイシュアから周りに移すと、確かにチラチラとこちらを見ている視線を感じる。
だがそれは、変なモノを見る目ではなく、男共が見惚れているだけだと直感すると、思わずリジェクトの口元に笑みが浮かぶ。
「いや…十分可愛いから…
それに今回は、カニの野郎に見せつける為のデートだ。
その為にも恋人同士みたいに、もっとオレに甘えればいいんだ」
「……ぁう…」
着物を身に纏い、長い青い髪を下ろしているリジェクトの姿もまた、妙に男としての色気が出ていて、そんな相手から言われた言葉に、イシュアは更に真っ赤になって俯きながらも、リジェクトに甘える様に身を寄せて…
「うん…さすが僕だ…
イシュアがまた僕に惚れ直してしまうかもしれないな…フフフ」
プロンテラのある宿にて、カルニィフィは仕立てて貰った着物を纏い、鏡を見ながら満足そうに頷くと、軽やかな足取りで街に繰り出し、アルデバランに転送して貰う為、カプラの元へ足を向けた時であった。
「今のは…イシュアでは…?
わざわざ僕の為にプロに来ていたのかっ」
視界を横切った青い髪に振りかえり、沢山の人込みの中を嬉しそうな笑みを浮かべたカルニィフィは、自信たっぷりにその方向へ走り始め…
「来たな……」
「え?」
イシュアを支えながら歩いていたリジェクトはぼそりと呟き、それに首を傾げながら見上げたイシュアは、いきなり後ろから抱きしめられてしまい。
「リ リジェクト…さんっ?」
「好きだよ…イシュア…」
「……っっ!?」
耳元に囁かれた言葉は低く、甘く、それだけでゾクリと背中が震え、イシュアは真っ赤になりながら目を見開き。
「すっげ…可愛い…」
「ぁっ…っ」
まるで麻薬の様に甘い声が体の自由を奪い、耳の端にほんの少しだけ相手の唇が触れるだけで、イシュアは思わず声を漏らし、そのまま体の力が抜けてしまい。
それを慌てる訳でもなく、抱きしめてままリジェクトは近くのベンチへ腰を下ろし、軽々とその体を抱き上げて向かい合わせにイシュアを自分の膝に座らせて。
「あ…あの…」
「カニの野郎がこっち見てる…」
「え…?」
「オレに抱きついて…キスして?」
「っっっ!!!!」
いきなりの事に戸惑うと、耳打ちの内容に軽く視線をずらすと、そこに固まったままのカルニィフィが見え、思わず青ざめるも、要求された言葉に耳までイシュアは真っ赤になり。
「ここであいつにショックを与えとけば、そう近寄らなくなるだろ?」
「……っっ~~…
ご ごめんなさいっ…!」
真っ直ぐに見つめられながら提案された言葉に、くらくらなってしまう程赤くなったイシュアは、どこかでこの状況を喜ぶ自分と、こんな役回りをさせてしまった申し訳なさと、そして激しい羞恥心に苛まれながら、短く謝罪すると、そのままリジェクトの首に腕を巻き付けて抱きつき。
遠慮がちに重ねられる唇を味わう様に、イシュアの背中に回した手に力を入れて引き寄せ。
視線をずらし、カルニィフィの方向を見ると、青ざめそのまま泣きながら走り去って行くのを見送り、思わずリジェクトは笑みを浮かべて、名残惜しそうに唇を離して。
「ん…イシュア…もういい…って!?
イシュアっ!?」
そこには、色々な感情が一気に押し寄せ、パニックになったイシュアが目を回していた…
抱きかかえ、慌ててハウスへと帰ったリジェクトが、イシュアに何をしたか悟ったイクスと、二人きりを邪魔されたシオンによって思い切り足蹴にされてしまうのは、その後の話しであった…
合掌………
その後のカルニィフィは…
「あぁぁ…イシュアが…僕の可愛い天使があんなコトを…
しかし…なんというハレンチで可愛らしい格好だったのだろう…女装姿のイシュアは……
はっ!!そうかっ
イシュアが僕を拒んでいる理由は、男の子だからかっ
だからあんな姿と、あんなイヤらしいコトを僕に見せつけて嫌われ様としたんだねっ
なんてコトだ…どちらのイシュアも愛くるしいと言うのに…
よしっ僕の天使…待っていて
君を女性の体にして、今度こそその体と一つになり、僕の花嫁にするよっ!!」
目の前に様々と見せつけられた行為にショックを受けて打ちひしがれていたカルニィフィは、すぐにその行為がイシュアが健気に自分に嫌われる為にした事だと結論付け、立ち上がるとガッツポーズをしてから、いそいそとケミギルドに所属している友人を訪ねるのであった…
それから暫くして、イシュアだけでなく、ルティ達さえも巻き込んでの事件を起こすのである……
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COMMENT
No Title
甘くほのぼの(?)な話の筈なのにカニ君が出ると無条件で笑ってしまいます。
目を回したイシュアwww キスだけでそんな状態になっちゃったらリジェクトは益々手を出し難くなるのでは!?
そして、ショックを受けたのに即回復(?)して斜め上に暴走する姿は、これは……シティリアやセツナと、いとこ説、ありかも知れませんね!
ご馳走様でした~。
東雲様
二人のほのぼのなちょっとラブっぽい話なのに、全てをぶち壊していくカニでした(笑)
イシュアはもう、色んな感情が混ざりまくって、パニックになって目を回すという…
まだ リジェクトが自分を好いてくれていると、気付かないので、中々に進展しないままですが、このままどうなるやらw
斜め上に暴走(爆)
本当にシティリアとかのいとこってのが一番しっくりきますねw
書かせていただき有難うございました☆