新しいギルド購入の為の費用を稼ぎに
ここ最近ギルドメンバーの転生2次職のメンバーは
殆どハウスにはいなかった。
クリエのディルは一日の大半はプロで露店。
チェイサーのリョウとハイウィズのアルは帰ってくるのは夜になってから。
ハイプリのイクスとAXのシオンの二人に至っては帰って来る事もなかった。
皆それぞれ忙しく 必死に稼ごうとしているので
1次職2人…イシュアとルティも少しでも役に立とうと自分達のドロップをお金に換えてリョウに渡そうとしたが、頑なに拒まれてしまった…
こんな事は転生2次職の自分達がするべき事だと…
この2人が所属するギルドは1次職の2人にはとにかく甘く
取り分けてリョウは大事な弟達と常に言い
大変な事はさせない様に大事にしてくれていた。
だから2人はせめてと
ギルドの家事と引っ越しの為の荷物を纏めたりするのを買って出た。
洗濯を終えて 各部屋の掃除をしていたルティはキッチンから漂ってくる香りに手を止める。
「この匂い…もしかして…」
ふわりと鼻をかすめる良い香りにルティはキッチンのある一階へ降りてゆく。
「イシュアくん もしかしてパン作ってる?」
「はいっ パンなら皆のお弁当にもいいかなぁって…
日持ちもするし…」
丁度小ぶりの小さなまるいパンが焼き上がり、冷ます為にトレーに並べていたイシュアは顔を上げ、少し照れた様にルティに答える。
「ボクも…手伝っていいですか?」
「是非お願いしますっ」
再び次のパン生地を丸め始めたイシュアにルティは声を掛け、イシュアは嬉しそうに答えて、2人は気持ちを込めてギルドメンバーの事を思い、パンを作っていった…
リョウやアルが好きそうな ソーセージやチーズを乗せたパン
イクスが食べられそうな少し辛めのピザの様なパン
甘党のシオンが好きそうなチョコを使ったパン
ディルの好む 照り焼きの鶏肉が乗ったパン
それらを作り 焼き上がる頃…
「はぁ…ホンマ疲れたわ…ん?なんやえぇ匂い…」
「ホントだぁ~」
すっかりくたびれた様子のリョウとアルがハウスに入ってきた途端、部屋中に香るパンの香ばしい匂いに鼻をヒクつかせる。
「リョウさんアルさん お帰りなさい」
「丁度パンが焼き上がりましたけど 食べませんか?」
キッチンのカウンター越しに二人を出迎えたイシュア達は笑顔でリョウ達を迎え、焼き上がったばかりのパンを見せる。
「うっわ~美味しそうっ」
「丁度腹減ってたんやっ 今食うっ!」
食欲をそそる香りにリョウとアルは笑顔になり、喜んでくれた事にイシュアもルティも嬉しそうに笑いながら、パンとコーヒーを用意して…
美味しそうに食べてくれたリョウとアルは 狩りで出たドロップ品を置いて、再び狩りに出かけてしまった。
イシュアとルティは 帰ってこないメンバーにパンを届ける為にそれぞれのパンを籠に入れて用意していた。
「喜んでくれたらいいけど…」
「きっと喜んでくれますよ」
用意をしながら、イクスやシオンに届けるイシュアは、少し不安そうに顔を曇らせるが、ルティは元気に答えてやる。
「でも ハウスを建て直す間はそれぞれ宿屋とかだし、こうやってご飯とかイシュアくんと作る事も暫くなくなりますね…」
「そうですね…寂しくなりますね…」
「やっぱりイシュアくんはイクスさん達と一緒に?」
「あ…え っと…」
香ばしい香りを漂わせるパンを大切な人に届ける為に丁寧に用意しながら、ふと 手を止めて、少しだけ寂しいそうにルティは呟き、それにイシュアも同意し。
暫く宿屋住まいになる為 イシュアの行き先を何気なく尋ねると、イシュアは曖昧な笑みを見せて。
「宿屋に移る時には…暫く兄さんとシオンさんを二人きりにしてあげようかなって思ってて…
実家に暫く泊まるとでも言って 他の所に泊まって過ごそうかと…
兄さんは知らないけど おれも実家から勘当されてるし、本当は帰れないけど、一人で宿屋とかに泊まるとでも言ったら、反対されちゃうし…」
「イシュアくん…」
「リョウさんにも 今度ハウス建てる時は、客間のひとつをおれの部屋として貸して欲しいってお願いしてるんです…
おれがいたら 兄さんシオンさんに甘えられないでしょ?
おれ…兄さんもシオンさんも大好きなんです…だから…」
『おれ 二人の邪魔はしたくないんです…
兄さんの事…好き過ぎて…まだ 諦める事 出来ないけど…
いつか…ちゃんと 離れられる様になるまで…
出来るだけ 兄さんがシオンさんと過ごせる場所作れたらって…
おれが出来る事は それ位だから…』
「イシュアくん…あぁ言ったけど…
多分イシュアくんが思ってる以上にイクスさんもシオンさんもイシュアくんの事好きだからな…
離れられないと思うけど…」
ルティはパンの入った籠を持ってプロの露店が集中する道を歩きながら先ほどのイシュアとの会話を思い出し、小さく呟く。
「イシュアくんも嘘つくの下手だし…多分イクスさん達はすぐ気づいちゃいそうだな…
また…居なくなったり…しないよね…?
あっ…!」
打ち明けられた秘密を誰かに言う事は出来ず、悶々と考えながら露店を見て回り、少し前の様に攫われたりしないだろうかと不安そうな顔をするが、視線の先に目的の人物を見て、小走りに走りだし。
「ディルさんっ
お疲れさまですっ!
あのですね…パン 作ってみたんですけど…食べませんか?」
露店をしていたディルに駆け寄ったルティは
客が居ないのを確認すると、籠に入ったパンを遠慮がちに差し出す。
「有難うルティ
早速頂くとするかな?」
「はいっ」
パンとコーヒーの入ったカップを差し出し ディルはそれを受け取ると美味しそうに食べ始める。
「ルティが作ったのか?」
「イシュアくんと一緒に作ってみました。
結構上手く出来たと思うんですけど…?」
「あぁ…美味しいのだよ」
「良かった…
ボク達はハウスの建て替えに何の協力も出来ないから…
こんな事位しか出来ないのが申し訳ないけど…」
「いや…十分なのだよ?
ルティやイシュアが居てくれるからこそ、私達は皆 頑張ろうと思うのだ…
十分、お前達の想いは伝わっているのだよ」
「…それなら とても嬉しいです」
ディルの言葉にルティは満面の笑みになり、
嬉しそうにディルの肩に顔を寄せて、束の間の幸せを噛み締めていた。
「イシュアっ!こんな危険な場所までわざわざ来なくていい!」
グラストヘイムへ繋がる城壁の外側のフィールドで
イクスはイシュアを思い切り叱っていた。
「ご ごめんなさい…」
城壁の外に来ているとWisを受け取ったイクスは狩りを中断し大急ぎでやって来た途端、イシュアを怒鳴り、イシュアはすっかり身を小さくして涙目になる。
「ったく…まだここまで来る道のりはお前には早すぎるんだっ
ちょっとは自分の体の事考えろっ」
「……ごめっ…なさっ…」
容赦ない叱咤にイシュアは涙を堪えながら謝る。
「で…一体いきなりこんな所までどうしたんだ?」
「…兄さん 達が…帰ってこない からっ…
お昼…届けに…っ…」
小さく震えながら差し出される籠にイクスは思わず目を見開く。
「わざわざ昼飯を…」
「イクス…腹減った…」
言葉を詰まらせるイクスを余所に
隣にいたシオンは籠から香る甘い香りにぼそりと呟く。
それを聞いたイクスは盛大なため息をつくと
怯えるイシュアの頭に手を乗せて くしゃくしゃと撫でまわし。
「兄さん…?」
「わざわざありがとな?
でも、次からは食べにオレ達が帰るから ちゃんと先に言うんだぞ?」
「は はいっ」
笑顔を見せてくれた事に イシュアはほっとした顔をして…
「あぁ…イシュア…
勿論お仕置きは受けて貰うからな?
明日 覚悟しとけよ?」
「にゃぁぁぁっ!?」
3人で座ってパンを頬張りながら
目の前に座っているイシュアを見つめながら
イクスはとびきりの爽やかな笑顔で言い放ち
それがどういう意味か理解したイシュアの情けない悲鳴が響き渡った…
翌日…
イクスに呼び出されたイシュアがその夜は帰って来ず
それから暫くは腰痛に悩まされ
狩りに行けなかったらしい…
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COMMENT
No Title
そして爽やかな笑顔のイクス……後ろに黒いオーラが見えます! その風景が頭を過りましたw
こんな可愛い一次職の二人が居るから意地も張ってられるんですね。納得です♪
ずっとニヤニヤしながら最後まで読んでました。ご馳走様でした~。
東雲様
一度見てみたくて、大量のハエと初心者P持って、とにかく飛んで飛んで城壁見学して、速攻で蝶で帰りました(笑)
多分イシュアも大量のハエで飛びまくってきたんだと思われます☆
イクスはイシュアに対してはサドっぽいので、その体を危険に晒したりした時はお仕置きしそうだなぁと…怒ったイクスより、爽やかに笑うイクスの方がハッキリ言って怖い!と思いました(爆)
どんなお仕置きされたのか…気になる…
イシュアもルティも ギルメンが大好きですから、一生懸命頑張ろうって思うんですよねw
こんな一次職メンバーですが これからも宜しくお願いします☆