『初恋って成就しないって言うじゃない?』
「どうしよう…僕 ディルさんが初恋だ…」
初恋の話から 途中外野まで参入して
シオンが大暴れしたお陰で 酒場から追い出されたりした
事件?からひと夜明けて
ルティは 夕飯の支度をしながら
ふと、その手を止めて呆然としてしまった
「僕 初恋でも ずっとディルさんを好きだって自信あるから…
もしかして ディルさんからいつか振られちゃうの…かな…?」
他の皆も 今の相手が初恋ではないと言ってた…
やっぱり初恋は実らないって事を
なんだか思い知ってしまった気がして
じんわりと目に涙が溢れてしまう
キッチンからそっとリビングを覗けば
ソファに寝そべり 書物を読んでいるディルの姿
誰より愛おしい 最愛の恋人…
その人と いつか別れる日が来るかもしれない
そう考えると 灰色がかった瞳から涙が零れる
「ま…まだ きっと先だからっ…
大丈夫っ…きっと 大丈夫っ…」
涙を拭い 顔を洗ってなんとか泣いたのを誤魔化し
夕飯の支度の続きに取りかかる
「お待たせしました~
今日はグランペコのいいお肉が入ったので
チキンソテーにしてみました~」
「あぁ…いい匂いだね」
鳥肉が大好物のディルは
大きなチキンソテーがテーブルに並べられると
嬉しそうに笑い テーブルに移動し席に着く
テーブルには こんがり焼けたチキンソテーの横に
野菜のグラッセが飾られ
温められたパンと 野菜のスープがついている
少なくとも ディル一人で暮らしていた頃には
外食でしか食べる事が無かったメニューであるが
ルティと暮らす様になってから
甲斐甲斐しく ほぼ毎日何かしら美味しそうな物を作ってくれている
ディルにとって 心から愛する者と過ごせる事だけでも
幸せな事なのだが
こうやって食事を作って貰い
共に食べれる事が より幸せだと思っている
けして失いたくない 心地よさと幸福感
美味しい料理を食べながら
いつもの様にルティと会話をして楽しく過ごす
いつもの様に…?
ふと 楽しげに笑っているルティの目が
少し赤くなっているのと
そして次第に分かってきた
ルティが自分の感情を押し殺している時の些細な雰囲気に気付く
食事を終えて 片付け
ソファに座るディルの元に食後のハーブティーを持ってきたルティに
手招きをして 自分の膝に座らせる
「ルティ?一体どうしたのだ?」
「っ!?え…あの…な なんでもないです…」
「嘘をつくんじゃない…
そんな事も分からない程 私はルティを見て無い訳ではないのだよ?」
「ディルさん…」
「さっき…私に隠れて泣いていたね?
理由をちゃーんと伸べて貰おうか?」
「……だっ…てっ…」
包み込む様に抱きしめられ 逃げられない様にされると
顔の覗き込んで隠していた事を指摘されると
ルティは目を見開き誤魔化そうとするが
それは全くの無駄に終わり
命令の様に言われてしまえば ルティがあがらえる筈もなく
小さく震えながら 涙を零し
「だって…初恋は実らないって…
僕っ 初恋ディルさんだからっ…
ディルさん以外 好きになんて…なれないのにっ…
きっと…ディルさん 僕嫌いになっちゃう…って…
いつか 別れないと いけないって…
そぉ 思ったら…
悲しくっ て…
僕…ディルさんじゃないとやだぁ…」
なんとも子供っぽい理由に
ディルは一瞬目を驚いた様に見開き
そして 苦笑しながら泣きじゃくるルティの顔を
自分の胸に押し付ける様に抱きしめて
頭を撫でてやり
「そんな事を心配していたのか…
大丈夫 私はルティを離す気は無いよ?
この先もずっとね…
それに 初恋は必ず成就しないって訳ではないのだよ
現にこうやって ルティの初恋は実っているし
これから先も 私はルティだけを愛しているよ」
「でも…いつか ディルさんが僕の事嫌いにっ…」
「なるわけない
それに私はルティの初恋の相手であり
初めての愛し合う相手でもある
それがとても嬉しい事なのだよ?」
「本当に?」
「勿論だとも」
「ありがとう…ございます…」
諭す様にゆっくりした口調で話すディルの言葉に
泣きじゃくっていたルティもやっと落ち着き
ディルの体温を感じる為に
背中に腕を回して ぎゅっと抱きついて顔を胸に埋める
ディルは白い柔らかな髪を優しく撫でながら
満足そうな 優越感に浸った笑みを思わず浮かべる
ルティ 君の初めての相手は私でないといけないのだよ
その無垢な何者にも穢されていない体に
これから一から私が教えていくのだから…
私だけに反応する 私好みの体にして
永遠に私だけに愛されてゆくのだ…
早くプリになりなさい
子供の時間はアコまでで終わり…
プリに転職したその日から
君の体は大人の快楽をその身で味わい
虜にしてあげよう?
絶対に私から離れられない様に…
私のルティ
君の初恋は私で良かった
もし、私以外の奴が君の体を愛していたら
きっとそいつに嫉妬していただろう…
「大丈夫ルティ 初恋は実る事だってあるのだ
心配しないで 私を信じるのだ
愛しているよ」
「はい」
ディルがどんな事を考えているか知る由もないルティは
その言葉に幸せそうに頬笑み
顔を擦り寄せ頷く
そしてディルもまた 従順に心から甘えてくれるその存在に
他の者には見せない 幸せそうな笑みを湛えて
誓う様にその額に そっと唇を落とした…
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