あれはいつの事だったか…
まだ俺がBSになって、やっと武器製造が出来る様になった頃だ…
「いいから走れっ!!俺が食い止めるからっっ」
あるフィールドで大量の敵に埋もれたシーフを見つけた俺は、その中に躍り出てその子を庇いながら叫ぶ。
純製造である俺は正直戦闘は苦手で、全く勝てるはずもなかったが、そのシーフが隣のフィールドに飛び込むまで、回復剤を連打しまくり、なんとか死なずに俺も後を追った。
美しい瞳、美しい顔立ちの…まるで聖職者にいそうな清楚な少女のシーフ…
傷だらけの彼女に回復剤と、まだ買う余裕が無いだろうと思い、作ったばかりのスティレットを渡してやった。
「大した武器じゃあないけど、属性武器だし暫くは役に立つと思う。
金稼げる様になったら、もっといい武器にするんだぞ?
そん時、もし俺の露店を見つけた時は、俺の所で買ってくれ…安くしとく」
そう行って、俺はその少女(っても、対して俺と歳は変わらないと思うが)の頭を優しく撫でてから別れたのだった…
「お久しぶりです…レイジェルさん…」
いつもの場所で露店を出していた俺に声を掛けてきた女性…
俺が一目で恋に落ちてしまった女性…シノさんだった。
「イクスから場所を聞いて…その…」
「えぇと…お茶でも しませんか?」
整った美しい顔をまるで少女の様に愛らしく頬を染める姿に、俺はまた胸を高鳴らせ、思わず自分も赤くなってしまいながら、精一杯の勇気を出して、お茶へと誘ってみた。
小さく 「はい」 とはにかんで笑うその姿に、俺の心臓は早鐘の様に高鳴り始めたのだった。
「実は…レイジェルさんのスチレが壊れてしまって…済みません…」
そう目の前に出された砕けたスティレット…
これは…間違い無い…BSになりたての頃に作っていた武器…
「よく…こんな昔のを持っていましたね…今から20年以上昔に作った物だ…
…逆に有難うございます…
こんなに大切に使ってきて頂き、武器も私も本望です」
申し訳さなそうに目を伏せるシノさんの手を思わずそっと握り、俺は本心から礼を伝える。
本当にこんなに武器が溢れる世界で、俺の…それも遥か昔の武器を今でも使っていてくれている事程、嬉しい事はない。
「俺も…以前ミコトの店で会った時から渡したい物があったんです…
よければ貰ってやってくれませんか?
貴方を想い、ホワイトスミスレイジェル…魂を込めて作らせて頂きました」
そうしてカートからラッピングした武器…先日錬成に成功した+10全属性ダマスカスをシノの前に置く。
「きっと他のランカーの武器をお使いだとは思いますが、どうか受け取って下さい。
俺はランカーではありませんが、魂を込めた武器を製造する事は、誰にも負けないと思っています。多分…貴女の役に立つと思います…」
「レイジェルさん…」
渾身の作である武器を渡し、俺は思わず赤くなる顔を誤魔化す為に視線を俯かせながら頭を下げる。
ほんの少しの間を置いて、シノさんの白く美しい指が俺の無骨な手に触れた。
「有難うございます…一生の宝物にします…」
「シノさん…」
「私…実は属性武器はレイジェルさんのスチレだけだったの…
属性武器を持つなら絶対貴方の武器がいいと思っていたから…
やっと…願いが叶ったわ…」
「っ…!?」
少女の様に微笑む彼女があの時の少女とダブる…
そして、俺の武器だけという言葉に、俺は泣きそうな位嬉しかった…
思わず言葉を飲み込み、なんと言うべきか言葉にする事が出来ず、俺は殆ど無意識にその白く細い手を両手で握り締めた。
「一生…貴女の望む武器を作ります。その為ならば、今更かもしれませんが、レベルだってあげてみせる…
だから…どうか…武器を作る事しか出来ない男ですが…俺と…その…結婚を前提に付き合って貰えませんか?」
「レ…レイジェルさんっ?」
どう…言葉にしていいか分からず、思わず感情のままに、俺は自分の想いをシノさんへ告げてしまった。もっと時間をかける筈だったのに…
さすがにシノさんもすっかり驚いた顔で、俺の手から一瞬逃れ様とするのを引き留める様に、しっかり俺はその手を握り締めた…
「で…でも…私は…貴方に愛して貰える女性では…」
「失礼ながら、イクスから貴女の過去も…そして職業も少しばかり聞かせて頂きました…
それでも俺は貴女が愛おしいと思った…
俺はそんな貴女を護る武器を作っていきたい…そして、その手を握り抱きしめてやりたい…
そう思いました…
シノさん…俺は貴女が好きです…」
戸惑うシノさんに、俺は畳みかける様に言葉を重ね、益々驚くシノさんを見ながらも、嘘偽りのない想いを告げて告白する。
例え…そう例え、戦いで先に失ってしまうかもしれない…
それでも、もう自分の想いを告げないままでいる事は出来ない…
それ程に愛している…
真っ直ぐに見つめるシノさんの瞳が潤み、その瞳から涙が一筋だけ流れ落ちて…
美しく微笑んだシノさんは、小さく、それでも嬉しそうに微笑みながら頷いてくれたのだった…
そんな彼女が、昔助けたシーフだと聞くのは、告白をし、互いの事を良く知る為に飽きもせず互いに話をして、5杯目のお茶を飲んだ頃であった…
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COMMENT
No Title
おっさん暴走したwww
再会した途端にお茶に誘って、そこで即結婚を前提に付き合ってくれとは(爆) 流石のシノさんもビックリですね。そして、それを聞いたライ達の反応を書きたくなっちゃいます(笑)
益々レイジェルはシオンの前で挙動不審な行動を起こしちゃいそうですよねー。未来の息子となるんだから、もっと積極的にコミュニケーションを取ろうとするレイジェルとやけに今日は絡んで来るなと鬱陶しがるシオンwww 想像しただけでも笑えます。
ご馳走様でした!!
紅露様
返事が遅くなって申し訳ありませんっ
おまけに返信書いていたら、途中で消えたりして、かなりショック状態…(泣
オッサンが暴走しましたよww
シノさんが可愛くて仕方ないし、20年以上恋愛してきてなかったので、何だか想いが一気に溢れて、一気に進んじゃいました☆
きっとこの先、レイジェルはシノさんもシズクちゃんも一緒に暮らして、大事にしていくでしょう♪
その内にシオンとの絡みも見たいw
そして、ライ達の反応も見てみたいww
この二人の結婚式とかに参列して、ライが隣にいる双月に、僕もそろそろ双月を嫁にしたい…とかいっちゃったりしてww
とか、変な想像してました(爆)
これからも、この二人を進展させていきましょうね♪
有難うございましたw