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雪の華が咲く頃に

オンラインゲーム 『ラグナロクオンライン』の小説を書いています。 内容はBL系が多くなると思いますので、 ご理解頂けない方、嫌悪感がある方 などの拝見はお控下さいます様、 宜しくお願い申し上げます。 先に カテゴリ『初めに』をご覧になって下さい。

   

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散り行く華へ贈る唄②

イシュア死亡フラグが立ってるお話第二弾☆

もう助からない…そう分かったイシュアをカルニィフィが連れてきた場所は……

しかし…新キャラ作る度におっさんキャラってどうしてなんだろうか(笑)








「一体何しにきやがっ…!イシュアっ!?てめぇっ!一体何しやがったっ」

宵闇の銘酒のギルドハウスの扉を内側から開けたリジェクトは、そこに立っていたカルニィフィに睨み付けながら追い出そうとするも、その腕の中で血塗れで抱かれているイシュアが目に入り、その胸ぐらを掴み掛る。


「リジェクト君…イシュアが……イシュアが……」
「一体っ…どうしたっていうんだっ…!」
「それは私から説明してやるよ…」


胸ぐらを掴まれても、カルニィフィは涙を静かに零し、言葉にしようとするも、その涙は止まる事無く、嗚咽を漏らすだけで、それだけでもリジェクトはイシュアがどうなっているか察し、逆に声を荒げて。
そんな中に割り込む様に声を掛けたのは、サーシャリィーであった。


「結論から言うと、この子は後1時間も持たん。
私の薬が効いてるから吐血こそ止まって寝ているが、本来は内側の臓器が溶け出し、大量の血を吐いて、激痛に苦しみながら死んで行く…あの事件で助けられ生き残った僅かな子達と同じようにな…」
「そんな死に方をする子が多数出れば、幾らなんでも表沙汰になるだろうっ」


部屋に招き入れられ、イシュアを着替えさせた後、リジェクトの部屋の椅子に腰かけ、サーシャリィーはイシュアの状態を説明してやり、それにリジェクトは食って掛かるが、それに動じる事無く、分厚いメガネを指で上へと持ち上げ。


「恐らくこの子が捕まった組織にヴォルガンがいたか関わっていたんだろう…
ヴォルガンってのは…もう随分昔に裏世界で名前が知られたクリエだ…
ただ、本当に表立って出て来る事が無い…いつだって事件を起こす主犯格に隠れて、殆どその存在は知る奴はいねぇ…
あいつが関わったどの事件も、全て関係していた組織ごと全滅してるから、誰もしらねぇんだよ…
最後に表だってあった事件は…20年位前だったか…
それも主犯とされた魔女や関係者は皆死んじまってるからな…
この子が捕まったあの事件の時も貴族やら関わっていた他の組織なんかが捕まって、全てが集結したと騎士団や国がデカい口叩いていたにも関わらず、真の黒幕が…それも40年位前から捕まえる事が出来ていないヴォルガンが関わっていたと気付いた上層部が表だって明らかにしてないんだろうな。それに死んだのはあいつらからすれば、ゴミみたいな名も無き子供達だ…
幾らだって捻り潰せる」


静かに淡々と、サーシャリィーの言葉が部屋へと響き、リジェクトとカルニィフィに伝えられる。


「このヴォルガンの作り出す薬は厄介でな…
ヴォルガン本人でさえ解毒剤が作れない薬ばっか作るんだ…
だからこそ、色んなモンを作りやがる…
全く異なる薬を作ってくるから…ずっと研究してるが…未だに私は解毒剤を作れた事が無い…
ヘタなモン作って飲ませれば…相手が速攻で死んじまうしな…
長年研究してきて、作れたのはあいつの薬が投与された相手が出来るだけ苦しまずに死ねる薬だ…役に立てなくてすまねぇな…」
「そん…な…ヒールや…リザレクションは…」
「試してもいいが…全く効果ないな…今その子の内側は、全く使い物にならねぇ状態だ…
リザも体が満足になきゃ、何の意味もねぇ…」
「っ…何が…神の奇跡だ…リザレクションだ…くそったれ…肝心な時に役立たずじゃねぇか…っ」


リジェクトはベッドに腰掛け、そこに眠るイシュアの頬に手を触れさせ、絞り出す様な声で叫ぶと、そのままベッドに拳を思い切り叩きつけて。


「イシュアっ!!」


その時リジェクトの部屋の扉をけたたましい勢いで開けて入ってきたのは、青ざめた顔のイクスを先頭にした、ギルドメンバーであった。


「イシュアっ…おいっ!イシュアっ…一体…何があったんだ…!」


ベッドにいるイシュアに駆け寄ったイクスはその手を握りながら声を荒げ、集まった宵闇の銘酒のメンバーを見渡し、サーシャリィーは深い溜息と共にもう一度イシュアの状態を説明してやり。


「急いで解毒剤をっ…!」
「無駄だ…君がこの子の命を留めていたジェネか…コレがその子に投与されている薬の成分だが…この短時間で解読し更に解毒剤を作る事が出来るか?」


説明を聞いたディルは青ざめた顔のままイシュアを治すべく容態を確認する為に近寄ろうとするが、そのディルをサーシャリィーは制し、目の前に取り出した成分表を差し出してやる。


「これ…は…一体……」
「見た事ねぇだろう…俺達の常識とかを遥かに超える訳わからねぇ成分の塊みたいなもんだ…
毎回全く違う毒物を作り出しやがって……」
「…っ…なんて…無力だ……目の前に消えてしまおうとする仲間の命があるというのに…
私はなんの為にっ…!!」


全く理解が出来ないその薬の成分が書かれた紙を見た途端、ディルは驚愕に目を見開き、ずっと解析を続けてきたサーシャリィーは自嘲気味に前髪を掻き上げながら呟やいて。
まるで手の打ち様が無い薬を目の当たりにして、悲痛気な声を漏らし、壁に手を叩き付け。


「いや…俺なら解毒出来る…クリアフィールドなら…薬の毒性だけを抜く事が…」
「毒性を例え抜いたとしても、溶けた臓器や骨まで治せるのか?
肺や胃なんかの臓器が完全に溶けてるだろうし、肋骨とかもほぼ溶けかけだろうよ…
それまで治せるのか?」
「くっ…貴様っ!!」


唯一、どんな薬であってもその毒性などを消す能力を持つアレスは、その自身の力を思い出し、すぐさまそれを展開しようとするが、傍にいたサーシャリィーからの非道とも取れる発言に、思わずその胸倉を掴み掛り。


「イシュア…何で…何で…暗殺者のオレより先にいくんだ」


多くの人の死を見てきたイクスは、すっかり冷たくなり、時折苦しそうに痙攣を起こすイシュアが今にもその命が尽きてしまう事がはっきりと分かり、その頭を自分の膝に乗せ、額を撫でてやりながら、絞り出す様な声で呟き。
瞳から溢れ出た涙が白いイシュアの頬を伝ってゆき。


「イクスを泣かせるな。親より先に死ぬのは最大の親不孝だぞ。さっさと起きろ馬鹿息子…」


その傍らに腰を掛け、泣くイクスの肩を抱き寄せながら、もう片方の手でイシュアの癖のある柔らかい髪を撫でいつもの様子で言い放つシオンの瞳も、どこか切なそうであり。


「…イシュアっ…!」


ひゅっ…と最後の息を吐き出し、苦しそうに…そして死ぬのを恐れるかの様にその拳がシーツを掴み震えるその瞬間、不意に空間に翠の淡い光が溢れ。

「間に合ったっ!!イグドラシルの樹よっ…我に力をっ!!」

驚く皆の前に、光の中から長い翠の髪に薄い6枚の羽根を美しく広げ、やはり淡い緑色のふわりとした衣を纏った妖精…双月がいきなり姿を現したのであった……

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