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雪の華が咲く頃に

オンラインゲーム 『ラグナロクオンライン』の小説を書いています。 内容はBL系が多くなると思いますので、 ご理解頂けない方、嫌悪感がある方 などの拝見はお控下さいます様、 宜しくお願い申し上げます。 先に カテゴリ『初めに』をご覧になって下さい。

   

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下弦の月③

イクスの夢の中に
イシュアが現れて…


やっぱり長らく続きそうな話です^^;



ちょっと 紫苑の過去がちら~と出てくるかな…?





『おにーちゃんっ』
『どうした?イシュア』

あぁ 昔のオレ達がいる…
無邪気な笑顔で オレに抱きつき
いつだってオレの後の付いてきていたっけ
大好きだと
世界で一番おにいちゃんが好きだと
満面の笑顔で言ってた…

オレに抱きあげられ 楽しげに笑うイシュア
オレ以上に母さんに良く似た 少女の様な顔
大事な 大事なオレの弟
お前だけは 誰より一番幸せにならないといけないよ
なぁ イシュア?

『にいさん…』

ふと 腕に抱きあげたイシュアの顔から笑顔が無くなる
泣きそうな顔で微笑む

『ごめんなさい…』

なんで謝る?
一体どうしたんだ…?

『さようなら……』

イシュアの瞳から涙が零れ落ちる
オレを見ながら頬笑み
そして 小さく呟くと オレの手からイシュアは消え
闇の中にその声さえも消えてゆく

『待てっ!イシュアっ!!』





「イシュアっ!!!」


がばっとイクスはベットから跳ね起きる
そこでやっとイクスは 今のが夢だと知る
夢なのに 酷くリアルであり まだ抱き上げた感触が残る
自分の手を見る

早鐘の様に胸が高鳴り 酷い動悸がして
手が 小さく震え 額から嫌な汗が流れ落ちる

「まさか…な…」

イシュアが 酷い目に合っているなど考えたくもなく
思いついた事を思わず否定しようかとするが
泣きながら さよならを言ってきた姿が脳裏に焼きつき
自身を落ち着かせる為に自分の体を両手で抱きしめる

「どうしたんだ…」

隣に寝ていたシオンは
イクスの様子に気付き目を覚まし
いつもと違うイクスを訝しげに見ながら尋ねる

「今…夢の中に イシュアが出てきた…
泣きながら ごめんって…さようならって…
夢…だと 分かってるんだが…
リアルで…」

酷く弱弱しく見えるイクスを見つめ
シオンは内心ため息をつく
今まで こっそりでもイクスの様子を伺っていたイシュアが
自分が二度と来るなと言ったあの後から
姿を消して 本当に全く姿を見せ無くなったのを知っている
自分にもちょっと責任があるのかもしれないと
頭の端っこで思ったシオンは
ゆっくり上半身を起こし
そっとイクスを抱きしめてやる

「Wisで呼びかけてみたらどうだ?
あいつなら 絶対にお前の呼びかけに応じるだろ」
「…あぁ…」

シオンの提案に戸惑う様にイクスは眉を潜めるが
息を吐き出し イクスは目を閉じてイシュアに呼び掛けてみる


「……返事がない…
Wisが切られてる…」

きっと 戸惑う様な声で
それでも嬉しそうに兄さんと返ってくる事をどこかで
信じていたイクスは目を大きく見開く
まさか……

「あの1次職を狙った事件に巻き込まれたって事か…?」

否定したかった事を
シオンが口にする

「…っ!」
「落ちつけ」

完全に冷静さに欠けたシオンは そこから飛び出そうとするが
シオンが腕を掴み ベットに押し倒し

「離せっ!シオンっ!今すぐ…今すぐイシュアを探さないとっ!」
「どこ探すんだ?闇雲に探しても見つかる筈ないだろう」
「くっ…!だが…っ」
「この手の事が詳しそうな知り合いがいるだろうが」
「…ぇ?」

いきなり組み敷かれ シオンに噛みつかんばかりに声を荒げるが
シオンは見降ろしながら 静にやるべき事を
冷静さを無くしたイクスに告げて



「そうか…イクスくんの弟が攫われたのかもしれないのか…
…やっぱりそうか…」

酒場に呼び出された双月はイクスの話を聞き
顎に指を掛けて呟く

「そうかって…何か心当たりが…?」

双月の様子に 何か知っていると気付いたイクスは
身を乗り出して尋ねて

「ん~ 実は 表にはまず知られていない裏の世界のオークションが
近々開催されるらしくてね…
それに出品する商品を探してるって情報があって…」
「オークションの商品?」
「うん…まぁ オークションって名の人身売買かな?」
「それが今回の事件と関わっているのか?」
「関わっているかは分かんないけどね?
今 色んな人達が捜査してくれてるから…
でも そのオークションに出品される殆どが子供とか
年端もあまりいかない子が多いらしいから
その為に捕まってる可能性もある…
だから 今闇雲に動いても仕方ない
辛いだろうけど 今は僕が言うまでは大人しくしていて?」
「はい…」

双月の話の内容に イクスは青ざめ
にぎった拳を震わせるが
今すぐにでも探しに行きたい衝動を抑え
俯きながらなんとか頷く

いい子だね…と 慰め様としていた時
双月にWisが入り 二人に軽く謝り耳に手を当てる


『あの男を捕らえた』
『随分早かったねぇ…それで?』
『クラスターが拷問と言う名の尋問をしたからちゃんと吐いたぞ』
『あ~らら…その人もご愁傷様に…』
『あの男はオークションに売り飛ばす商品を狩ってたらしい
まぁ…オークション主催側から雇われているだけだった様だが…
だが オークションの開催場と時間は分かった』
『そう…いつ?』
『今日だ…』

サンダルフォンからのWisで急展開した内容を耳にした双月は
その闇のオークションの日取りを聴いて
さすがに目を軽く見張った




「で…なんで私がそのオークションに参加しないといけないのよっ」

唐突に呼ばれた紫苑は 盛大に不機嫌極まりない顔をして
憮然として言い返した

「しょうがないと思って…
だってあのオークションに参加が今から出来そうなのは
君位だろう?紫苑
悪名高き 大魔法使いの弟子にして唯一の生き残り…
そして、以前は裏世界を牛耳るマフィアの用心棒兼愛人で
その手のイベントにも多数参加経験がある…」
「言っとくけど相手が私の愛人であって
私が愛人だった訳じゃないわよ」
「そんな事はどうでもいいから…
だから そのオークションに顔と名前だけで当日入れるのは君だけだ
そこに侵入して 様子を探って教えて欲しい」
「えぇぇ~~ 嫌だ~ぁ~
なんで私がそんな面倒な事しないといけないのよ~ぉ」

諭す様に話を双月は紫苑にするが
自分の経歴を話され 更に嫌そうな顔をして
まるで駄々っ子の様に文句を並べる

自分の私利私欲の為にしか動かない男である紫苑に
さすがの双月も焦りの色が見えるが
イクス達から呼ばれたギルメン達のリョウが目について
思わず双月は手招きをする

「なんや 双月はん?」
「リョウくん 紫苑を説得して?
この事件には紫苑の協力がなきゃ解決出来ないのに
全く強力してくれないんだ」
「え?わいが説得?」

呼ばれて素直にリョウはアルを伴い傍に来て
リョウを見ながら双月から言われた言葉に
リョウは目を丸くして

「…そうねぇ…じゃあリョウくんが
私にキスしてくれたら 考えてあげる」

呼ばれたリョウをちらりと見た紫苑は
アル以外には絶対する事がない事を要求してみせ
にんまりと笑い
リョウはすっかり青ざめて固まり
アルはいきなりの事に茫然と口が開く

『…アル ごめんな?よぉ分からんが
キスせぇへんと どうもイクスはんの弟はんが助けられんらし』
『うん 大丈夫 分かってるよ…』

リョウとアルの間だけで
短いWisがやり取りされた後
リョウは深く息を吐き出し…



ちゅっ…


と 紫苑の頬に口づけをした…

「こ これでえぇやろっ!」

自分の頬に柔らかい唇が触れ
真っ赤になったリョウが 腕組みをして
どうだっ と言わんばかりにドヤ顔で立っている姿に
紫苑は少しだけ動きを止めて リョウを見つめて…

「ふふふふ…あぁ もうリョウくんったらかわい~
貴方の可愛さに免じて その依頼受けてあげるわ?
その代わり双月 高いわよ?」
「覚悟してるよ…」

弾かれた様に笑いだした紫苑はひとしきり
リョウを抱きしめながら笑い
手を離すと 安堵の笑みを浮かべる双月をちらりと見て
双月は 軽く苦笑いをしてから頷き






イシュア…どうか 無事でいてくれ…

イクスは そのやり取りを見ていて
どうやら事がうまくいきそうなのに
安堵の息を吐き出し
初めて神なる物に祈っていた

ただ一人の愛おしい弟の無事を…










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