「これは…紫苑…様…」
「はぁい 久しぶりねぇ？
なんか今回 楽しい事するらしいって聞いてねぇ…
丁度今 私好みの子を探していた所だったから来ちゃったｗ
勿論 入れてくれるわよねぇ？」
荒廃するジュノ―フィールド08…
その分かりづらい地形の奥まった
人がこない場所に その建物はあった
黒く要塞の様な大きな城や宮殿を思わせる様な作り
その入り口にいる門番の男に
紫苑は親しげに声を掛け
知っていたらしい男は顔を強張らせる
相手が自分を怖がる事を分かっていてやってる紫苑は
その男の顎に指を掛け
紫の瞳で覗き込む
男の背中に 冷たい嫌な汗が流れていった…
「僕らは イクスくんの弟を助ける事だけに専念する
イシュアくんを助けたら 騎士団達が一気になだれ込んでくるから
それまでには逃げないと 僕らの方が巻き込まれるだろうし…」
リョウ達のギルドハウスのリビングで
双月は皆を見まわして作戦を離す
「まずは会場に紫苑は客として入って
会場にいる人達を見張って？
なんなら、適当に切れて会場で少々暴れても構わないし…」
「なによ そんな面倒な役…
あ～ 嫌だわ…」
カウンターに腰掛けて 入れて貰った紅茶を飲みながら
役を振り分けられた紫苑は嫌そうに声を上げるが
双月は完全に無視をする
「その間に リョウくんシオンくん
君達二人が姿を消して入り込み
イシュアくんを助けだすんだ…
君達なら もし見つかっても逃げ出せるだけの力はあるはず」
「任せといてやっ」
「なんで俺が…」
重要な役を与えられてご機嫌に答えるリョウに反して
シオンは露骨に面倒そうな顔をする
「オレが助けに行く！」
シオンの答えに 居てもたってもいられないイクスは
自分から名乗りを上げるが
イクスは小さく首を横に振り
「ダメだよ…君はあまりにも目立ち過ぎる…
格好の的になって騒ぎになる」
「っ……シオン…頼むっ…」
自ら助けに行くことを否定されてしまい
イクスはショックを受けた様に項垂れ
小さく呟くと シオンはため息と共に頷き
「僕とイクスくん そしてアルくんは
近くで皆が出てくるまで待機だ
リョウくん達が出てきたら 共に逃げる
場合によっては戦わないといけなくなるから…
ディルくんとルティくんはここで待機して
僕らが帰ってきてからのイシュアくんの治療を頼むね？」
それぞれに役を振り分け
これから向かう建物の内部の設計図をどこからか入手したのか
それを見ながらリョウとシオンに説明して…
「イシュア…」
その場所に向かって歩き始めたイクスは空を見上げて
小さく呟く
イシュアの髪と瞳の色の様に綺麗な青空であった
「大丈夫だ…必ず助け出す…」
「シオン…有難う…」
そっとその手を握るシオンは 静かに告げ
イクスは泣きそうな顔で俯き 小さく呟いた
「この中ではWisは繋がらない構造になってるから
用事がある時はこのスクロールに書いて知らせて？
そっちが書くと こっちの紙に文字が浮かび上がる
仕組みになってるから」
「随分便利な物を作ったんだね？」
「色んな場所に行くからねｗ」
そう言いながら 紫苑は一人 会場となる場所へ向かい
リョウとシオンは密かに建物に近付き
姿を消すと中へと侵入した
「リョウ…頑張って…」
「シオン…無事でいろよ…」
残された二人は それぞれの恋人の身を心配そうに案じ
祈りを捧げた…
神がいると言うならば
どうか 私の大切な人を助けて下さい…
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