「ほぅ お前からは魔力が感じられる…
さぞ いいウィザードになるだろう…」
悪名高きその魔女と会ったのは、私が4歳になるかならないか…
グラマラスな肢体にハイウィザードの衣装を纏った女は私の顎を捉えて妖艶に微笑んだ。
「本来なら 私の薬となるのだが…お前はこれから私に遣えるがよい。
だが、夢々逃げようとか、裏切ろうなどと思うなよ?
そうしたら最後、他の子供と同じ様にその体を引き裂き、全ての血を奪ってやるから、そのつもりでいる事だ…」
女の名は ルギアス
そのたぐいまれなる力から、稀代の魔女と言われ
そして、金次第で相手が誰であっても動く事などから悪名高い女であった。
何より、その美貌と若さを保つため、世界から子供を集め、その生き血を絞り、それを身に浴びたり飲んだりしていた。
勿論私もその一人として攫われてきたのだけれど、なぜだかルギアスから気に入られ、その日から その女に遣える事となったのだ。
彼女の悪行は裏世界では有名で、騎士団やらが討伐に来るのだが、その力は凄まじき物で、彼女の住まう城に近付く前に氷付いたり、焼かれたりしてしまい、誰も近づく事は無かったのだ。
そして、そんな彼女に寄生虫の様に傍にいるクリエイターがいた。
「ヒヒヒ…今日も大量大量…」
ボサボサの髪の不潔な男はその城の地下に住まい、連れて来られた子供達の喉や体を引き裂いて風呂に溜めたり、血から薬を作ったり、そして彼女が浴びた血や死体を使って何かしらの研究をしている様だった。
いつもいつも血に塗れ、嬉しそうに笑いながら研究をしているクリエイターが気持ち悪かった。
一体何を作ってるのか気にはなったが、時が立つ度に それを知りたいとかは思わなかった。
ただ ただ…暗い城の中、その日一日を生きる事だけだった…
「はぁ…臭い…」
13歳にはすぐにマジシャンにされた。
城に連れてこられ殺された子供達の死体を焼却場に持って行って焼いたりするのが日中の私の仕事。
自分の体から血の匂いがして、私は毒づきながらため息をつく。
死体を処理したり、他はあの女の身の回りを手伝ったり、侵入者を殲滅したり…
毎日みたくこき使ってくれて、そのくせ無給だし…
でも、有難い事に自分のマジシャンとしての力はあの女のお陰で上がっていた。
いつか、あの女を殺して自由を手に入れる…
それが 私が生きている理由だった。
「紫苑~ この男処分してて~」
ルギアスの寝室から眠そうな声が私を呼ぶ。
またか…そうため息をつきながら向かうと、ゴージャスなベットの下に干からびた男が転がっていた。
多分、生きてた時は美青年だったんだろうな…
「またですか?ルギアス様…
いい加減もうちょっと保たせて下さいよ…」
ため息を付きながら、ベットに横たわる女を見上げると、長く豊かな金髪を掻きあげ、ベットに頬づえをついて女は私を見下ろす。
「違うわよ~ 相手が弱いだけよ~」
面倒くさそうに呟くと、ベットから私の頬に指を掛ける。
「紫苑 アンタいくつになったの?」
「14ですが?」
「そう ここにきてから随分たったのねぇ…結構な美少年になったじゃない?
ふふ…いらっしゃい?」
拒める筈がない…
ベットに誘いこまれ、逃げる訳にもいかず慰み者になった。
初めて知った女…
気持ち悪くて反吐が出る…
それでも、私は他の男の様に女から力を奪われる事は無かった。
逆に与えられた、魔力…
それは、女がいつか来るだろう時の為に私を抱いていた事を、この頃の私は知る由もなかった。
クリエイターの不潔な男は相変わらず何かしら研究をしていた。
殆ど会話などする事が無かったが、魔法以外の勉強もしてきた私には分かり始めていた。
あの男は、子供達の血肉を遣い、賢者の石と…そして、キメラやホムンクルスの研究をしている事に…
どんな栄華を極めようが、滅びの時はいつかくる。
私は 16になっていた。
マジシャンの服ではなく、ウィザードの服を着て、やはり あの女に遣えていた。
まだ、ウィザードになって そうなってない頃だった…
その時は突然やってきた…
騎士団を中心とした、ハイウィザードやハイプリ、クリエイター…色んな職業の者達の軍団が城を襲ったのだった…
『ルギアスの血戦』
のちに この戦いを経験した者達はそう呼んだ戦いであった。
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