「一体何がっ…!?」
地下の古書室に篭ってルギアスに言われた本を捜していた時、
地上から聞こえてきた激しい爆発音と振動に驚き、軋む天井を見上げる。
古書室の扉を開けると、地上から大勢の声と、爆発音が鳴り響いていた。
とうとう この難攻不落の城が落ちる時がきたのだ…
どさくさに紛れて 逃げてしまえば…そう分かってはいたと言うのに…
私は 城の者しか知らぬ隠し階段で最上階のルギアスの元へと向かったのだった…
「ルギアスっ!?」
階段を駆け上がり、最上階のドアを開けた私の目に飛び込んできた光景は…
最強の魔女ルギアスが片膝を付いて、胸を抑え、
その少し離れた先にあの不気味なクリエイターが見知らぬ転生2次職の冒険者達を従え、不気味な笑みを浮かべていた。
「アイスウォールっっ!!!
紫苑っこいっ!!」
私を目にした途端、ルギアスはクリエイターの目の前に巨大で分厚いアイスウォールを張りめぐらし、私を呼ぶ。
クリエイターは慌てる事なく、その氷の壁を破壊すべく、周りの冒険者達に指示を出す姿を横目で見ながら、私はルギアスの元へ急いだ。
「一体なにがっ…」
「時間が無いわ…アンタにこれを託すから逃げなさい?」
「何を…?っ!?」
荒い息を吐き出しながら片膝をつくルギアスと起こそうと手を伸ばす私に、苦しそうだが妖艶な笑みを浮かべたルギアスは、次の瞬間何かを唱え、自分の胸に手を当てると…
そこから真紅に輝く石が現れて。
「これは…うぁぁぁっっっ!!!!!」
驚く私を余所に、いきなりルギアスはその石を私の胸へと押し当てて。
その石は強烈な熱を放ちながら、私の中へと潜り込んでゆき、あまりの熱さと痛みに私は悲鳴を上げて。
「この石はあの男が作った物…とんでもない魔力を秘めた石よ…
十分アタシの力を蓄えたこの石を回収する為に、あの男は今からアタシを殺すつもりだったけど…
この石をアンタに引き継ぐ為にアンタを今まで育てたのには気付いてなかったみたいね…
ふふっ…そう簡単に死んでたまるもんですか…
アンタもこれから…命がけで逃げなさい?
その石がある限り、安住する事なんてないわ」
唇から血を零しながら、楽しげにルギアスは笑い、私の手に蝶の羽を握らせて、握りつぶさせる。
その瞬間見えた物は、驚きに見開かれたクリエイターが次の瞬間にはなんとも不気味な笑みを浮かべて、私を見ていた……
「がっ…はぁっ…くぅっ…」
セーブ位置であるゲフェンの東口に降り立った私は、降りしきる雨の中を人目を避ける様に、内側から熱く焼けつく体を引きずりながら、そのまま隣のフィールドへと出ると、這いながら茂みに身を隠す。
胸が焼けつき、内側で何かが激しく暴れ周り、全身を引きちぎられる様な痛みが全てを襲う。
「ああぁぁぁぁっっっ!!!!」
土砂降りの雨の中に、自分の悲鳴が解け込む。
気が狂うその痛み…あぁ…もうどうか…
このまま私を死なせて…
どうか…お願いだから……
生きていても、きっとあの男は私の命を狙うだろうから…
もう楽になりたい……
どれだけの時間がたったかは分からない…
意識は混濁し、薄れ、何も感じなくなっていた。
あぁ…もう死ぬんだ……
よかった…
漆黒の闇へと引きずり込まれる感覚に身を委ねた私は、そのまま意識を手放した。
その闇の奥から、キャンキャン鳴く声…
そして…
「ヒールっ!!」
優しい声と暖かな光が私を包む…
それしか覚えていなかった……
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