もう少し…もう少し…
そうずるずると自分を誤魔化している内に
いつの間には時は過ぎていった。
拾われて、レンの傍にいる様になって4ヵ月…
新聞でもあれだけ賑わっていたルギアスの事も載らなくなった。
まぁ、新しい情報なんて殆ど入らないでしょうけど…
そんな中 暫く討伐隊として教会からの指示で出ていたレンが帰ってきた。
用意していた食事を食べて、食後のお茶を飲んでいた時に、
レンは唐突に切り出してきた。
「今日…ルギアスの城跡の調査の任務だった…
あの城から色んな魔物が溢れ出ていたらしくてな…」
「……」
その先、なんと言われるか予想しながも、私は静かに、出来るだけ取り乱さない様にレンの話を聞く。
「ルギアスには仲間がいたらしくて…その仲間の痕跡はまったくないし、遺体も見つからない…
見つかったのは大量の子供の骨位だった…
そして…ルギアスの仲間だと言う一人の手配書を渡された…
それは…」
「私…だったんでしょ?
そろそろ…ばれるかなって思ってた…」
どこか言いにくそうに、視線を俯かせたレンに、この穏やかな日々が終わる悲しみと、そしてどこかホッとした自分を感じながら同意した私に、レンは驚いた様に私を見た。
「ルギアスの仲間の一人…私だ…
早く言わなきゃって思ってて…あんまりにもココが心地良かったから…
でも逃げたりしない…レンにだったら、教会に差し出されても後悔しない」
「なぁ…紫苑…
良ければ、なんでお前がルギアスの仲間だったのか…話を聞かせて貰えないか?」
動揺するレンとは対照的に、私は落ち着いて今まであった事を話した。
連れて来られてから、この身にルギアスから引き継いだ呪いの様な石の事も…
「そんな幼い頃から…随分な目にあってきたんだな…」
全てを聞き終わった後、レンは泣きそうな顔で、目に一杯涙を溜めながら私をしっかり抱きしめてくれた。
「もういいんだ…どちらにしても、このままじゃ、あのクリエイター達に狙われるだろうし、それよりはまだ、レンに教会に差し出された方がいい…
教会も、えげつない対応してくるだろうけど、慣れてるしね?
今まで有難う…レン?
私は生きてきた人生で、アンタと過ごしたこの期間が一番幸せだった。
そんな時間をくれてありがとう。
…さて、今からでもいいし、明日でもいいけど…いつ教会にいく?
今から行くなら、せめてシャワー位浴びたいんだけど…んんっっ!?」
がっしりした筋肉に自分の顔を預けて、私は心からの想いをレンに伝えた。
本当にこんなに穏やかに今は受け入れられる。
レンと離れるのは惜しいけど、ここにいれば迷惑が掛かるから…
だから、もういいのだ…
告げるべき事を告げ、最後位は綺麗にしたいと思って、その腕から逃れ様とした途端、いきなり私の唇はレンによって塞がれてしまった。
驚き目を見開く私を気遣う事なく、歯列を割り、強引に私の口腔へ舌を差し入れ、絡め取ってゆく。
激しく舌が絡まり、吸い上げ、息もつけぬまま、レンの熱い舌が私の口腔を犯して。
あまりの苦しさに、レンの背中を叩くけど、抱きしめた腕はほどかれる事なく、何度も方向を変えて唇を貪られ。
「はっ…はぁ…はぁっ…なにっ…するんだっ…
ころすっ…気かっ…!」
やっと唇が解放されたのは、私が酸欠を起こし、倒れた時であり、同じく肩で息をしながら私を抱きしめているレンを睨みつけながら文句を言うと、まるで叱られた大型犬みたいに情けない顔で私をレンは見下ろしていて。
「悪ぃ…でも…俺は紫苑を離したくない…
お前を愛してるんだ…」
「っ!?」
泣きそうになりながら、私の頬を無骨な指で撫で、絞り出す様に囁かれた言葉に、私は目を見開いた。
驚きと…そして嬉しさと…
そして私自身…レンを愛していた…
だからこそ、こんなに穏やかにいれたのだ…
自分の中の初めての想いにやっと気付いた私と、そしてレン…
なんて残酷な運命だろうか…
思わず零れそうになる涙をなんとか堪え、思い切りレンの頬を指先で摘まんでやる。
「いたいっっぃぃっ!!!何するんだっ!紫苑っ」
「全く…寝言は寝ていいなさいよっ
アンタは教会所属の人間でしょうがっ
私なんか匿ってたら大罪なのはわかるでしょっ!
アンタは折角この世界に…光の中にいるんだから…
自ら闇に落ちなくていい…
アンタに似合いの人を捜して?
…アンタが連れて行かないってなら…自分で出頭するよ…」
痛がるレンを見上げながら、思わず叱り飛ばし、摘まんだ頬をそっと撫でてやりながら、考えを改める様に促してから、レンの胸を押して離れ様とした途端、いきなり抱き上げられ、ベットに放り投げられて。
「きゃあっ!?ちょっ…なにするんだっ!!」
「なぁ…紫苑…
確かに俺はお前を教会に渡さなきゃならない人間だ…
だから…一緒に逃げよう?
ココから遠く離れた…辺鄙で人がいない場所に…
二人で静かに暮らそう…
俺は…やっぱり紫苑を離したくない」
「なに…言ってるんだよ…
いい加減に…っ」
「初めて見つけた時から…惚れてたんだ…
一目ぼれだった。
多分何かある奴だって分かっていても、それでもいいと…それでも必ず守るって思ったんだ…
だから俺は何一つ今の立場も場所も追われても怖くない。
紫苑が居てくれればいいんだよ」
「レン…っ…頼むからっ…考えなおしてっ!
私はアンタに愛して貰える様な立場の人間じゃないっ
きっと私に着いてきたら…殺されるから…
お願いだから…愛したりしないでっ…」
「お前の為に死ねるなら本望だ…
逃がさない…」
強い強い 真っ直ぐに見つめる瞳に絡み取られた様に、私は動けなかった。
どれだけレンが本気だと言う事が分かってしまったから。
年上の力強い男の体が私の体に伸し掛かり、私の首筋に食らいつく。
首筋から鎖骨、胸元へと舌を這わし、その箇所箇所を吸い上げ、余すところなく所有印を刻みこんでゆく。
私に…初めて恋を知った私に…こんな強い想いを振りほどく術なんて知る筈も無かった…
「ふっ…ぁんっ…あっ!!」
今までだって男との経験は数えきれないほどあった。
ルギアスを抱くだけではなく、彼女の前で余興として連れてきた男達に抱かれる事や、出入りしていた奴らに輪された事もしょっちゅうだったから、どんな物か分かっていた筈なのに…
レンからの行為は酷く優しくて、そしてじれったくて、あまりの気持ち良さから声が漏れてしまう。
けして急がす、優しくバックの箇所をローションで濡らして指で何度も解き解して、私が痛くない様に気遣い…
蕩ける様な指の動きがもどかしくて、思わずその指を締め付け、レンの首に手を伸ばす。
「あんっ…レン…早く…」
「可愛いな…紫苑は…挿れてやるよ…」
求める私に、何とも愛らしくて愛おしい笑みを浮かべたレンは、何度目か分からない口づけを唇にしてくれて、そのままひとつになった。
かなり大きなレンの男は、確かに私の中を圧迫して、擦れる具合は痛かったけど、それが嫌じゃなかった。
レンと一つになれた満足感と、何とも言えない高揚感。
愛する者に抱かれると言うのが、こんなにも幸せで、心地よくて、痛みさえも感じてしまう。
私の体がレンの大きさに慣れる頃、激しくその男自身で私の後方をレンは犯す。
焼けつく様な熱さと、息がつまりそうな圧迫。
それを上回る言い知れない快楽に、私は完全にレンに落とされた。
身も心も、この男無しで生きていけぬ程、もっとと今までに無い情けない程の甘い声を上げて、レンを求めた。
「お前の攻められてる顔って すっげーそそるよな?
すっげ 可愛いと思うぜ?
もう…ずっと鳴かせてたいっ」
「ばかっ」
お互い抱きしめ合いながら、私を責め続けるレンは楽しそうに見下ろして囁き、あまりの恥ずかしさから、思わず私は怒った様に顔を背ける。
この瞬間だけは…普通の愛し合う恋人同士の様で…
私は逞しいその背中にしがみ付きながら、レンの熱い欲望を奥で受け止め、そして私もまた、レンと自分の体へと大量に解き放った……
その次の日
教会に退職届けを出したレンは、僅かな荷物を纏め、ランの眠る卵を大事に持って、私の手を握り、部屋を出た。
真夜中…月も出ていない新月の夜
私達は生きる為に全てから逃げた。
分かってはいたが、どこかで思っていた。
このまま逃げ切り、二人でこの先静かに幸せに暮らせるんじゃないかと…
まだ、子供だったのだろう…
そんな事 出来る筈が無かった……
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